鹿児島県出水市では、市内中心部を流れる米ノ津川と平良川で、堤防ぎりぎりまで濁流が押し寄せた。近くの人たちは橋の上や川沿いの道路から、今にもあふれ出しそうな茶色の川を不安そうに見つめていた。
平良川沿いにある同市向江町の平良馬場自治公民館には約20人ほどが集まっていた。館内では、地元婦人会の人たちが急きょ、炊き出しを始めていた。近くの宮下タミコさん(71)は「50年以上住んでいるが、こんな大雨は初めて。川がはんらんしないか心配です」と、目の前をごうごうと不気味な音を立てて流れる濁流を見つめていた。
一方、同市の本町商店街は、冠水のため全面通行止めになった。明かりの消えた信号機の前で、地元の消防団が車を誘導していた。シャッター街と化したアーケードでは、靴を手に持って、傘を差しながら裸足で歩く人の姿がちらほら見られる程度。経営する仏壇店の店舗前に土のうを積んでいた木村正友さん(49)は「近所の店では商品を奥に移動させているようだ。こんな雨では店も開けない」とぼうぜんと立ちつくしていた。
また、同市立出水小学校の体育館には昼ごろ、近くの44世帯約100人が避難。子どもたちが元気に走り回る中、大人たちは互いに毛布にくるまったり、不安そうにテレビの放送を見つめたりして身を寄せ合っていた。近所の人たちと避難してきた先立守子さん(78)は「避難したこと自体初めて。(市内で97年に起きた)針原の土石流災害の時も、ここまで大雨ではなかった。家が浸水しなければいいのですが」と、表情を硬くしていた。【松谷譲二】
毎日新聞 2006年7月22日 21時46分