三重県亀山市で02年7月、元不動産業の片岡礼子さん(当時70歳)を殺害し現金200万円を奪ったとして、強盗殺人の罪に問われた同市椿世町、無職、川戸義雄被告(69)の控訴審で、名古屋高裁は24日、無期懲役を言い渡した1審・津地裁判決を支持し、同被告の控訴を棄却した。物的証拠がなく、同被告が一貫して否認する中、最大の焦点だった状況証拠の信用性について、門野博裁判長は「目撃証言などは信用性が高く、間接事実を総合すると、合理的疑いを超えて認定出来る」と述べた。
控訴審で検察側は、(1)事件直前、川戸被告が現場で目撃されている(2)事件直後に約120万円の借金を返済した(3)事件後にアリバイ工作を行った--点などを主張。「間接事実を総合すれば、犯行は明白」と訴えた。
これに対し、弁護側は「川戸被告の目撃証言はあいまいな点が多く、信用性が低い」と反論。現場から同被告の指紋が検出されていない点や、使用車両や衣服から血痕が検出されていないことなど挙げ、「1審は可能性だけで認定している」と批判した。
判決によると、川戸被告は02年7月1日午前11時半過ぎ、亀山市栄町の片岡さんの自宅兼事務所で、片岡さんの左胸を刃物で刺して殺害し、現金200万円を奪った。
今回の事件では、三重県警が同年11月、殺人容疑で同被告を逮捕。津地検は一度は処分保留で釈放したが、03年9月になって一転、強盗殺人罪で起訴するなど、異例の展開をたどった。1審・津地裁は昨年3月、「合理的な疑いを超える証明がされた」と求刑通り無期懲役を言い渡し、同被告が控訴した。【月足寛樹】
毎日新聞 2006年7月24日 11時20分