局所的な集中豪雨による被害を最小限に抑えるため、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が首都圏を対象に、災害の発生を1時間前に予測するシステムの開発を始めた。500メートル四方単位で1分間ごとの降雨量を観測できる高性能レーダーを使い、浸水被害と土砂災害の危険度を分かりやすく示すという。
大都市での豪雨災害は、人的被害に加えて、通信、交通などの都市機能や経済活動に大きな影響を及ぼす。現在は地上雨量計と、解析能力が1キロ四方単位の気象レーダーとを組み合わせて、10分間ごとの雨量情報を調べているが、局所的で短時間に発生することが多い集中豪雨の予測は難しいのが実情。
このため同研究所は、雨量計がなくても、降雨範囲の移動速度や雨滴の形、分布密度まで1分単位で観測できる高性能のマルチパラメータ(MP)レーダーに着目。神奈川県海老名市にあるMPレーダーを含め、首都圏に3カ所のMPレーダーを設置する。さらに、現在、防衛大学校(神奈川県横須賀市)や中央大学(東京都文京区)などに置かれていて、降雨範囲の移動速度を観測できるドップラーレーダーも組み合わせ、ネットワークを構築していく。
これらのレーダーの情報を解析することで、最終的には1時間先の豪雨や強風、さらにそれに伴う浸水や土砂災害をも予測する技術の開発を目指す。実用化までには5年程度を見ているが、研究所のホームページ上で、浸水や土砂災害の危険性を色分けして示す方法なども導入したい考えだ。
同研究所水・土砂防災研究部の真木雅之部長は「よい結果が出れば、中部や近畿、福岡などの大都市にも広げていきたい」と話している。【石塚孝志】
毎日新聞 2006年8月9日