山形県鶴岡市にある自民党元幹事長、加藤紘一衆院議員(67)の実家と事務所が全焼した事件で、県警鶴岡署は29日、現住建造物等放火などの容疑で右翼団体幹部の男を逮捕したが、その動機はまだ明らかになっていない。男の所属する団体は、頻繁に他団体との勉強会にも参加していたとされ、県警は背後関係についても厳しく追及する。
公安当局によると、逮捕された堀米正広容疑者(65)が所属する「大日本同胞社」(東京都新宿区)は77年9月に結成。構成員は10人前後。堀米容疑者は山形県出身で、かつて同県と長野県に支部があったとされる。
78年に「尖閣列島領有決死隊」と称し、同列島魚釣島に他の団体メンバーら十数人と上陸。86年には過激派事務所を襲撃して逮捕者を出すなど、過激な側面を持つ。
事件前には、昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示したとされる側近メモの存在が明らかになったこともあり、右翼陣営では、靖国問題を幅広く研究する横断的な勉強会が活発に開催されていた。大日本同胞社は「頻繁に勉強会に参加する団体」(公安幹部)とされるが、堀米容疑者がこれらの勉強会に参加していたかどうかは確認されていない。
同団体幹部は「どうして、あいつがあんなことをしたのか」と言って組織的な関与を否定し、個人の犯罪と強調。山形県警の家宅捜索でも、事務所から事件をうかがわせるビラなどは見つかっていない。このため、公安当局も、背後関係があるかつかみかねている。
公安当局は、加藤氏の発言に反発を持っての放火とみて、堀米容疑者を厳しく取り調べる。
現在、実質的に活動している右翼は全国に約900団体、約1万人。小泉純一郎首相が靖国神社に参拝した15日には、早朝から約200団体計約1000人が全国から集まっていた。
毎日新聞 2006年8月29日