NECグループの中核事業である半導体部門の業績不振が鮮明になっている。80年代には売上高世界一の半導体メーカーとして君臨したが、06年には売上高で世界ベスト10から陥落(米ガートナー社調べ)した。02年に分社化した半導体子会社、NECエレクトロニクスは、07年3月期で2期連続の営業赤字(300億円)に陥る見通しで、同社の中島俊雄社長は「経営危機」を宣言した。【斉藤望】
NECエレが手がけているのは、デジタル家電やコンピューターなどの「頭脳」に当たるシステムLSI(大規模集積回路)。DRAM(記憶保持動作が必要な随時読み出し書き込みメモリー)など、世界共通の商品をいかに安く大量生産するかが勝負となる半導体とは違い、電子機器ごとに専用機能を盛り込む特注品だ。販売価格も高く設定できるため、米インテルがパソコンの頭脳であるマイクロプロセッサーで世界標準を握ったように強力な商品を持てれば、利益も膨大となる。しかし、そうでなければ利益はおろか、研究開発や設備にかけた投資の回収も難しくなるリスクもある。
NECエレは、液晶テレビやDVDレコーダーの画像用や自動車用の半導体で世界標準化を目指したが、実現できていない。競争力のある商品を作るには、有力な家電メーカーなどと世界規模で共同開発体制を整えることが不可欠になるが、「取り組みが甘い」(中島社長)という。
2月下旬に発表した経営再建策では、国内4工場に分散している生産ラインを09年度までに9から4に集約することを打ち出した。また7000人の開発陣のうち、約1000人分に相当する開発プロジェクトを中止し、浮いた人員をデジタル家電など強化分野に振り向けるが、「工場閉鎖や人員削減は行わず、事業の絞り込みが足りない」との見方もある。
NECが同社を分社したのは、経営の意思決定を早めて収益基盤を強化するのが目的だった。しかし、株式の65%を握る親会社、NECとの利害調整に追われ、体力をすり減らしているのが実態ともいわれる。NECエレの業績悪化で、NEC本体も業績下方修正を迫られる事態に陥っている。08年3月期での黒字転換を目標に掲げているが、長期的な成長戦略は描けないでいる。
NEC
http://www.nec.co.jp/
NECエレクトロニクス
http://www.necel.com/index_j.html
2007年3月8日