【ロンドン藤好陽太郎】キプロスとマルタが08年1月1日、欧州単一通貨ユーロを導入する。このところドルや円に対し高値で推移するユーロをめぐっては、加盟に慎重だった大国ポーランドが態度を一転させるなど求心力が高まっており、ドルに対抗する“基軸通貨”として存在感を一気に強めている。
キプロス、マルタの加盟でユーロ圏は15カ国に拡大。09年1月にスロバキアが加われば16カ国になる。07年10月に政権交代のあったポーランドが「2012年のユーロ導入」に転じ「チェコやハンガリーも早期加盟に動く」(英系銀行)との見方が強まっている。
求心力の背景には、欧州経済の好調で、財政赤字削減など加盟条件をクリアしやすくなったことがある。06年には紙幣流通残高でドルを抜き、地位向上が目覚ましい。
00年には景気低迷で1ユーロ=80円台まで下落したが、現在は165円前後と2倍。市場では「一気に1ユーロ=180円台を目指す」との見方もある。ドルに対しても最高値圏で、ブラジルのスーパーモデル、ジゼル・ブンチェンさんが広告出演の報酬を「ドルでなくユーロ建てにして」と要求したほどだ。
産油国も熱い視線を注ぐ。クウェートは為替制度をドルに連動させる方式からユーロなど複数の通貨の動きに合わせる「通貨バスケット」に変更。他の湾岸諸国も同様の方式を検討し始め、外貨運用でもユーロの比重を増やしている。
欧州中央銀行はインフレを警戒するが、米国のサブプライムローン問題などで景気の先行きには不透明感も漂うため「ユーロが評価されるほど金融政策運営は難しくなる」(関係者)と悩ましげだ。