日銀が景気の中期的な見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の07年度実質成長率予測について、従来の1.8%から1.3~1.4%程度に大幅下方修正する方向で検討していることが29日、明らかになった。改正建築基準法の影響による住宅投資の大幅減や景気減速傾向を反映させるための修正。
展望リポートは4、10月に公表しており、それぞれ3カ月後に「中間評価」として見直す。今回の下方修正は08年1月21、22日の金融政策決定会合で行う中間評価に盛り込む。
6月に施行された改正建築基準法で建築確認審査が厳しくなった影響は日銀の想定を超え、11月の新規住宅着工件数は前年同月比27%減と5カ月連続の前年実績割れ。日銀はこれが07年度の成長率を0.4~0.5ポイント程度押し下げると分析している。政府は12月下旬に07年度成長率見通しを従来の2.1%から1.3%に見直しており、日銀も足並みをそろえる形になった。
07年4月の展望リポートは「企業部門の好況が家計部門に波及する好循環が進む」として、07年度成長率が潜在成長率(1.5%程度)を上回る2.1%まで上昇する姿を描いた。
しかし、7月以降の住宅投資減少に加え、原油高も打撃となって好循環は進まず、07年10月の展望リポートでは07年度成長率予測を1.8%に小幅下方修正。それからわずか3カ月で再修正を迫られることになった。
住宅不振の背景には賃金の伸び悩みやマンション価格上昇による買い控えも影響しているとみられ、11月の政策決定会合では、メンバーから「住宅投資減少が長期化し、経済全体に影響が広がる可能性」も指摘された。
一方、08年度成長率予測については10月時点の2.1%を維持。日銀は「景気は緩やかな回復基調を続ける」との見方を根拠に、引き続き追加利上げの機会を探る方針だが、市場では07年度の下方修正を受け、超低金利政策が長期化するとの観測が一段と強まるのは確実だ。【坂井隆之】