21日から日中韓首脳会談が開かれます。その際、中国の温家宝首相が東北の被災地を訪問するんですが、あの3月11日に中国と被災地を結ぶこんな出来事がありました。
今、中国で「英雄」と称される日本人がいます。
「私たちの国の人を救ってくれて感謝します」
「自分の命も家族の利益も捨てて、私たちの国の人を救ってくれました」(大連市民)
その日本人の名は佐藤充さん。宮城県女川町にある水産加工会社の専務でした。佐藤さんは面倒見も良く、中国人研修生からも慕われていました。
「佐藤充さんはあの日、中国人研修生を連れて工場の目の前にあるこの階段を上ってきました。そして高台にあるこちらの神社に避難させました」(記者)
「皆すごく怖がっていました。佐藤さんが来て私たちにほほえみかけて『怖がらないで大丈夫、僕についてきて』と言ったんです」(研修生 寇敏さん)
佐藤さんが真っ先に避難させたのは中国人研修生20人。その後、津波が町に襲いかかりました。何かを探しに戻った佐藤さんは、屋根の上に取り残されました。
「佐藤さん、なんであんな所にいるの?」
「佐藤さん!佐藤さん!」(研修生)
それは研修生たちが最後に見た佐藤さんの姿でした。
「水にのまれた!海にのみこまれるよ!!」
「ああ!もう見えなくなった・・・」(研修生)
「佐藤さんが海に落ちるのを見ることしかできなかった。どうしようもありませんでした」(研修生 寇敏さん)
「感謝しても感謝しきれません。佐藤さんがあそこに避難するよう言ってくれなければどうなっていたか分からない」(研修生 王迎冬さん)
中国人研修生を救った日本人。この話は中国の主要メディアでも取り上げられ称賛されました。
「研修生の派遣元の会社には、佐藤さんの遺影が掲げられています。そしてこの上には“命の恩人 佐藤充さんに感謝する”と書かれています」(記者)
「20人の命があるのは、すべて佐藤さんのおかげです。だから私たち中国国民としても佐藤さんに大いに感謝すべきです」(研修生の派遣元の会社 董偉副社長)
研修生が折った鶴、そして女川での写真・・・。そこには「命の恩人」だけでは語れない思いが込められていました。
「中国人であれ日本人であれ、みんなを平等に扱ってくれました。みんな彼を褒めていました。本当に良い人、優しい人です」(研修生 寇敏さん)
今週末に行われる日中韓首脳会談。来日する温家宝首相は被災地を訪問することが決まっていて、中国政府は日中友好重視の姿勢を強調するとみられています。冷え込んだ日中関係は、佐藤さんの行動をきっかけに大きく変わろうとしています。(20日23:47)