日本産科婦人科学会は7日、体外受精した受精卵の染色体異常を調べる新しい受精卵検査の臨床研究に関する公開シンポジウムを東京都内で開いた。学会倫理委員会の苛原稔委員長は「流産を繰り返したり、体外受精がうまくいかなかったりする人に有用かどうか検証したい」と述べ、臨床研究への理解を求めた。
シンポジウムには産婦人科医などの医療関係者や市民が参加し、意見を表明した。セント・ルカ産婦人科(大分市)の宇津宮隆史院長は「流産は女性にとってものすごくつらい経験だ。(検査によって)回数が減る効果があるのではないか」と意義を認めた。
これに対し「受精卵から細胞を取り出すときに傷つけてしまうのではないか」「正確に検査できない場合があるのでは」との懸念の声もあった。「35歳以下の若い女性だけに実施すべきだ」といった意見も出た。
受精卵検査は流産の防止に役立つ可能性がある一方で、ダウン症などを排除する「命の選別」につながるとの批判がある。学会は会場から出た意見を10日に開く倫理委員会に報告し、28日の理事会で臨床研究の方法を正式に決める。早ければ、夏から臨床研究を始める方針だ。
臨床研究は体外受精で3回以上妊娠に失敗したり、2回以上流産を繰り返したりした計600組が対象。300組は受精卵の細胞の一部を取り出して染色体を調べ、異常がない受精卵を子宮に戻して妊娠や出産に至る割合が増えるかどうかを3年かけて調べる。