農林水産省は10日、2014年の農林水産物・食品の輸出額が6117億円となり、1955年に統計を取り始めて以来初めて6000億円を突破したと発表した。前年比11%の増加で、2年連続で過去最高を記録した。世界的な和食ブームが続いていることや、海外政府に農産物などの輸入規制の緩和を働きかけていることが背景だ。
農産物の輸出額は前年比13%増の3570億円となった。お菓子の輸出が33%増の148億円。牛肉も41%増の82億円となった。農水省は「国産牛の輸入を止めていたメキシコやインドネシア、ベトナムなどと検疫協議がまとまり、輸出の伸びに弾みがついている」と説明している。
水産物は前年比5%増の2337億円となった。ホタテ(12%増)や真珠(30%増)、サケ・マス(36%増)などが押し上げた。林産物は38%増の211億円だった。
国・地域別では香港向けが7%増の1343億円だった。真珠や乾燥ナマコが好調だった。2位は米国で932億円、3位が台湾で837億円だった。4位の中国は22%増の622億円と伸びが大きかった。ホタテ貝やサケ・マス、丸太の増加が全体を押し上げた。
過去10年の農林水産物・食品の輸出額は浮き沈みが激しかった。2007年に5160億円まで増えたものの、その後の世界的な金融危機の影響で、09年は4454億円まで落ち込んだ。11年に東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故が起きた後は風評被害などもあり伸び悩んだ。
転機は13年に和食が世界無形文化遺産に登録されたことだ。世界的な和食ブームに日銀の金融緩和に伴う円安が重なり、輸出額を押し上げた。政府は放射性物質が付着している可能性があるとして国産の農林水産物の輸入を止めている国と相次いで協議。オーストラリアの規制の完全撤廃につなげた。欧州連合(EU)やシンガポール、米国などとも輸入規制の緩和を進めている。