全国の道路で導入が進む発光ダイオード(LED)を使った信号機で、関係者が着雪対策に追われている。LEDは従来の電球型に比べ表面の温度が低く、雪が付着して信号が見えなくなる事例が頻発。取材では、試験導入を含め全国で12道県警が対策に着手している。メーカー各社も知恵を絞るが決定打は見つからず、独自に開発を目指す県警も現れた。
雪に覆われ、色が見えにくくなったLED信号機(富山市)=共同
色が表示されるはずのレンズ面にびっしりと雪がこびりつき、色が分からなくなった信号。「雪国なのに、なぜLEDにした!」。短文投稿サイト「ツイッター」には苦情とともに数々の写真が投稿されている。記者も昨年12月、富山市内の国道で、まるで消灯したかと見まがうほど雪に覆い尽くされたLED信号機に出くわした。
警察庁によると、LED信号機は耐用年数や消費電力、色の見えやすさなどから全国で急速に普及。2013年度末時点で全体の約45%を占め、今後も従来型からの切り替えが進む見通しだ。
警察などから要望を受け、信号機メーカーは対策に知恵を絞っている。日本信号(東京)と京三製作所(横浜市)は11年、既存のLED信号機に取り付けるおわん形透明カバーを共同開発し、販売を始めた。
石川県警は10カ所に設置した。カバー付き信号機が導入されたそばに住む同県白山市の板金業、宮川栄一さん(65)は「効果もあるのだろうが、カバーの上3分の1くらいに雪が積もっていた」と話す。向かいにある白山署鶴来庁舎の職員が長い棒でときどき雪下ろしをしている。
メーカー側はカバーの形を変えたり、表面に特殊な塗料を塗ったりといった改良を加えているが、まだ試行段階。京三製作所の担当者は「雪質は地域によって異なり、万能薬はない」と嘆く。
コイト電工(静岡県長泉町)が信号機の表示板を厚さ約6センチの薄い板状にした「フラット型信号灯器」を雪対策に活用しているところもある。板を路面に対して垂直よりも少し下向きに傾け、風雪の直撃を受けにくい仕組みだ。
ただ、導入した青森県警からは、効果はあるものの一度雪が付着するとやはり見えにくいという声が上がっている。同県警によると、表面温度はLED信号機が20度台で、電球型が45度前後だったという。
山形県警が採用するのは電熱線で雪を溶かす方式。信号電材(福岡県大牟田市)は赤信号部分だけに電熱線を取り付けた。ただ、風雪が強いと溶ける面積が小さくなることから、県警は改善を依頼した。
青森県は県の研究機関を含めたワーキンググループを設置し、独自で開発に取り組む。座長で県警交通企画課の工藤彰参事は「手作業で除雪していることを考えると開発は急務。成功すれば全国的な需要が見込めるのでは」と話した。〔共同〕