【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は25日、域内のエネルギー安全保障の強化に向けた取り組みを示す「エネルギー同盟」の戦略案を発表した。ウクライナ問題をめぐって対立しているロシアからの天然ガスや原油の輸入依存を低下させることが主な狙いだ。輸入先の多様化や電力融通や省エネの拡大などを掲げたが、効果が出るまでに時間がかかるうえ、実現に向けたハードルも多い。
欧州委によると、EUのエネルギー自給率は50%弱で、輸入額は年間で約4000億ユーロ(約54兆円)に及ぶ。特に天然ガスではバルト3国や東欧などの6カ国はロシアからの輸入に100%依存している。EUはウクライナで親欧米政権への支援を強化する一方で、域内ではエネルギー面で脱ロシアが急務との意見が強まっている。 昨年11月に発足したユンケル欧州委員長が率いる欧州委では、シェフチョビッチ副委員長をエネルギー同盟の担当に充て検討を進めてきた。シェフチョビッチ氏は25日の記者会見で「(現在のEUにつながる)欧州石炭鉄鋼共同体(の発足)以降で最も野心的なエネルギー計画だ」と意義を強調した。今後EU内のエネルギー相や環境相が具体的な内容を議論するほか、3月19~20日に開催する首脳会議でも話し合う予定だ。
今回の戦略案では今回「エネルギーの種類や供給先、供給経路などの多様化」を目指すことを主要な課題として掲げた。天然ガスでは、具体的にはアゼルバイジャンなどのガスを念頭に「中央アジアからの輸入を可能にする『南方回廊(パイプライン)』計画を強化しなければならない」と指摘。北欧では「多様な供給先からの液化ガスの基地建設」を挙げた。インフラ整備には、ユンケル欧州委員長が提案している3150億ユーロ規模の官民投資基金も利用する方針だ。 EUではロシアから天然ガスの供給を停止・制限された場合に備えて「液化天然ガス(LNG)の最大限の可能性を探る」という。日本を含むアジア各国などもLNGの輸入を増やしていることも考慮し、欧州委として総合的な「LNG戦略」を準備する。現在交渉中の米国との自由貿易協定(FTA)などを通じて、米国からシェールガスを輸入することも期待している。 このほかEU域内でエネルギーを融通しあう仕組みが必要との認識も示した。EUは現在、2020年までに電力生産能力の10%を融通できる体制をつくる目標を持っているが、欧州委は30年に15%まで拡大する目標を設定する考えも明らかにした。 エネルギー同盟の戦略では省エネの強化や再生エネルギーの導入促進なども盛り込んだ。エネルギー消費を1%節約すれば、ガス輸入量を2.6%減らせるとの試算もある。EUでは30年までにエネルギー効率を当初想定より27%向上させるとの目標を掲げており、ビルなどの建物や交通分野での取り組みを強化する方針だ。 |
EU、エネ戦略で脱ロシア ガス輸入先を多様化
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