札幌市東区の福祉施設事務長、上田隆樹さん(50)は、約8年前に妻を亡くしてから、小学6年の長女(12)と2人暮らしの「シングルパパ」だ。同じ境遇の父親が気軽に相談できる窓口をと、昨年1月に支援団体「えぞ父子ネット」を設立、父子家庭の悩みに助言している。
2007年4月、自宅で娘と昼寝をして起きると、妻が倒れていた。病院に搬送されたころには、亡くなっていた。死因も分からない突然の別れ。上田さんは4歳の娘と2人、取り残された。
近所に親類はなく、頼る人もいない。出勤前の午前7時15分に幼稚園に娘を預け、午後8時すぎに一緒に帰宅し、その後も家事に追われる生活。「十分に会話もできず、親子ともに疲れ果てた」と振り返る。
1年後、育児のために仕事を辞め、在宅の古本販売を起業した。年収は以前の4割に減ったが、貯金を崩してしのいだ。13年4月、高学年になった娘は1人で食事を温めて食べられるようになり、復職した。
上田さんは「シングルパパには悩みを話せる相手がいない人が多く、孤立しやすい」と語る。聞きたいことは、育児と仕事の両立から、女の子の髪の編み方までさまざま。北海道に父子家庭の支援組織がなかったこともあり、自ら始めた。
「父子ネット」は上田さん1人で運営。ブログや講演会での発信が中心で、これまでに約40人から相談が寄せられた。
「とにかく、誰かとつながることが大切」と上田さん。父親同士の接点を増やすため、今後は料理教室や本の読み聞かせ会を開催する予定だ。〔共同〕