【ジュネーブ=原克彦】国際労働機関(ILO)は6日、働く女性のなかでも母親の方が子供を持たない人よりも給与が低いとする報告書を発表した。女性の賃金に関する各種の研究を基にまとめたもので、子供が多いほど賃金が下がる傾向がある。男女間の賃金格差に加え、女性間でも所得の差が開く構図が顕著になっている。
子供2人を持つ女性と持たない女性を比べた欧州の調査では英国で25%、ドイツでも15%の賃金格差がみられた。米国では結婚している母親で2%、未婚の母だと12%低いという研究があった。逆に男性は所帯持ちの方が給与が高いという。
途上国21カ国を対象にした研究では母親の賃金が子供のいない女性より42%低く、別の中国での研究でも37%の差があった。それぞれの研究は調査の時期や条件設定などが異なるため単純比較はできないが、総じて途上国の方が先進国よりも母親に不利という。
子供の数が多い方が賃金が下がるのは、米国のほか途上国での調査でも明らかになっている。米国では子供1人なら子供のいない女性との差は2%だが、2人なら13%、3人だと21%に広がる。また、子供が幼い方が賃金が低くなるのも共通している。
ILOは母親の多くが育児負担からフルタイムの仕事を断念していることや、母親の採用・昇格を敬遠する文化が企業などの雇用主に根付いていることなどが原因と指摘。男性の育児休暇拡大や、託児施設の充実といった対策を求めている。フランスとイタリア、デンマークは母親の方が子供のいない女性よりも賃金が高かったが、欧州でも少数派のようだ。