米国務省は3日、約200カ国・地域を対象にした2016年の「人権報告書」を公表した。日本に関しては、広告大手、電通の新入社員の女性が過労自殺したことや、メディアへの政権の圧力を指摘。アダルトビデオ(AV)の出演強要問題も盛り込まれた。
過労死については、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が15年12月に自殺した事件に言及。「karoshi」という日本語を使い、遺族から厚生労働省への訴えが続いている中で「特筆すべき事例」として挙げた。1カ月に130時間に及ぶ時間外労働と、睡眠時間が週にわずか10時間だったという記録を示し、「過労がもたらす深刻な結果に、新たな関心を引きつけた」とした。
また「報道の自由」については、日本政府は一般的には尊重しているとしながらも、「いくつかの事例が、政府によるメディアへの圧力の高まりについて懸念を生じさせている」と指摘。昨年2月、番組の政治的公平性を理由に、放送局に「電波停止」を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言を示した。また昨年4月に来日した国連特別報告者の発言も引き合いに「報道の独立性は重大な脅威に直面している」とした。
若い女性が「モデル業」などと偽の勧誘を受けて、AVに無理やり出演させられる被害が広がっていることにも触れた。(ワシントン=高野裕介)