聖マリアンナ医科大学(川崎市)は14日、神経精神科の男性准教授が不適切な臨床研究を実施していたなどとする調査報告書を公表した。参加の取り消しなどを求めた患者に対し、カルテの改ざんもしていた。大学は近く准教授を懲戒処分にする方針。
聖マリアンナ医大、臨床研究で不備7件 中止勧告へ
この臨床研究は、承認済みの2種類の統合失調症治療薬を患者に使って効果などを比較する内容。
調査委員会がまとめた報告書によると、無作為で患者を分ける計画に反し、意図的に患者を割り振っていた。参加するすべての患者に文書で同意を得ることになっていたが、一部でしていなかった。また、研究に使った一方の薬の製薬会社から年100万円以上の講演料などを受け取っていたのに、学内規定で義務づけられた大学への報告をしていなかった。
報告書は、製薬会社の利益になるようにこれらを行ったのではないかと、「疑われてもやむを得ない事実経過である」と指摘した。発表された論文2本は撤回すべきだとした。
この問題は、研究に不信感を抱いた患者の訴えがきっかけで発覚。報告書によると、患者が求めたカルテ開示に備えて、男性准教授は「(研究延長の)同意を得た」などと虚偽の内容を電子カルテに書き込んだ。全データの開示と削除を求められた際には、別の担当者が「データを破棄した」とうその説明をすることに同意していた。
また報告書は、男性准教授を含む同科の医師3人が実施した別の6件の臨床研究でも不備を指摘。大学は研究の中止を勧告する。(竹野内崇宏)