白血病で娘を失った群馬県高崎市の黒岩由香さん(52)が骨髄移植への理解を深めてもらおうと企画した映画「迷宮カフェ」が7日、劇場公開された。黒岩さんは「あくまで娯楽映画を目指した。ユーモアを交えた場面もあり、気軽に楽しみながら骨髄移植を知ってほしい」と話している。
黒岩さんの次女、実莉さんは2007年、急性骨髄性白血病を発症した。骨髄の提供者(ドナー)は見つかったが実莉さんの容体が安定せず移植を断念し、08年に14歳で亡くなった。
その後、黒岩さんは骨髄移植の普及活動に参加。誤解や偏見があることを痛感し、移植を経験した元患者や遺族らと11年に「骨髄バンク普及映画を作る会」を結成。製作費を捻出するため全国の医療機関などに呼びかけて協賛金を集めた。
監督、脚本は前橋市在住の帆根川広さん。ブログで知り合い、交流を深める中で黒岩さんが協力を依頼した。帆根川さんは「黒岩さんの強い思いも伝わり、骨髄提供を後押しする社会的意義のある作品にしたかった」と語った。
映画の舞台は、客が次々と失踪するとうわさされるカフェ。主人公の女性店主が自殺を志願して集う客に、簡単に死ねるというカプセルを渡す代わりに、ある交換条件を持ち出すというストーリー。骨髄提供に関わる登場人物の姿を通して命の尊さを訴えていく。ラストシーンは、実莉さんが亡くなる直前に家族で訪れた新潟県の瀬波海岸で撮影された。
7日は前橋市、東京都新宿区、新潟市で公開。順次、各地で公開される予定。〔共同〕