買い物に出向くのが難しい高齢者ら買い物弱者向けの新サービスが関西で相次ぐ。農協や地域の食品スーパーが移動販売に参入するほか、コープこうべ(神戸市)はテレビ画面を通じた簡単な操作による新たな宅配の注文方法を3月末から導入する。山間部だけでなく、都市部でも住民の高齢化や店舗撤退などで買い物支援へのニーズは高まりつつあり商機を探る。
兵庫六甲農業協同組合(JA兵庫六甲、神戸市)は8日、JR芦屋駅前で農産物の移動販売を始めた。収穫したての野菜30品ほどを販売。農協の移動販売は珍しい。神戸市産の大根やネギを買った芦屋市の70代主婦は「新鮮な地元産の野菜は手に入りにくい」と喜んだ。この日は売上高26万8千円で黒字だった。
神戸市内など兵庫県内の計8カ所で順次始め、初年度の売り上げ目標は4500万円。同JAの田中竜太郎販売チームリーダーは「都市部の高齢者らに取れたての野菜は価値を持つ」とみる。集荷拠点の増設なども進め、将来は高齢者向けの宅配事業も検討する。
食品スーパーや生協でも移動販売への参入や強化が相次ぐ。
食品スーパーのサンキョー(和歌山市)は2月、和歌山市内で移動スーパーを始めた。同事業のノウハウを持つ、とくし丸(徳島市)と提携。1千点以上の商品を載せた専用車で市北部の店舗を拠点に3コース週2回ずつ巡る。日用品も含む豊富な商品を見て選べるのが特徴。当面1台だが石原秀夫副社長は「3店ある店舗に2台ずつ配備できれば」と話す。
京都府のスーパー、フクヤ(宮津市)もとくし丸と組み昨年4月から府北部の宮津など3地区でサービスを始めた。1日8万円ほどの売り上げがあるという。4月から伊根町も加える予定だ。
大阪いずみ市民生活協同組合(堺市)は昨年11月に大阪府の泉佐野・阪南両市で移動販売を始めた。2012年7月から河内長野市と千早赤阪村、14年5月から河南・太子両町で手掛けており3台目。近隣に店舗がないニュータウンに住む高齢者らも対象に、さらなる地域拡大も検討する。
生協大手のコープこうべは宅配事業で高齢者の利便性を高める。東芝と組み、3月末から専用端末をつなげたテレビ画面を見ながら注文できる新サービスを始める。数字などを大きく記したリモコンの簡単な操作で商品を選べる。陰平康則インターネット事業部長は「注文予測など機能を拡充する」と話す。
大阪市や京都市などで店舗展開するライフコーポレーションなどスーパー3社や関西の4生協はNTT西日本と3月、ネットスーパーの普及促進で連携した。郊外のほか都市部でも買い物支援サービスに商機を探る。
農林水産省農林水産政策研究所の推計(13年5月時点)では、近畿6府県で生鮮品販売店まで500メートル以上あり車も持たない世帯の比率は大阪府を除いて全国平均(6.1%)を上回っている。こうした買い物弱者を対象としたサービスの需要は高まりそうだ。