パナソニックは26日、2015年度(16年3月期)の事業方針を発表した。通常の設備投資とは別に1兆円の投資枠を設定し、成長の柱と位置づける自動車や住宅関連事業で機動的なM&A(合併・買収)や大型の工場建設ができるようにする。津賀一宏社長は同日の記者会見で「(不採算事業の)構造改革は完遂した」と発言。今後は攻めの経営にカジを切る。
パナソニックは14年度の連結売上高を7兆7500億円と見込んでいる。津賀社長は「18年度に連結売上高10兆円を何としても達成する決意だ」と発言、今後4年間で2兆2千億円強を上積みするため、来年度から「戦略投資枠」を新設するとした。M&Aや大型工場の建設などを通じて「非連続な成長」(津賀社長)を狙う。15年度にまず2千億円を振り向ける計画で、従来の設備投資と合わせると投資額は4800億円となる。
戦略投資の最大のターゲットはM&Aだ。3月に4千億円の普通社債(SB)を発行し、資金面の手当ても付けた。買収の対象は自動車や住宅、システム開発分野が中心で、買収額は「数百億円規模を基本としているが、1千億円単位もあり得る」(津賀社長)。
注力分野の自動車関連事業は事業拡大が続いている。18年度の売上高目標を2兆円としていたが2兆1千億円に引き上げた。そのうち約7割を受注済みといい、残りをM&Aなどをテコに積み上げる。自動運転システムを成長事業と位置づけ、大手自動車メーカーに直接納める「ティア1」と呼ばれる有力車部品メーカーを目指す。
住設機器など住宅関連事業は18年度に2兆円に伸ばす。国内でエネルギー使用量を削減したスマートシティー(環境配慮型都市)の開発を加速するほか、海外では台湾や東南アジアで住宅事業を本格展開する。住宅のコンセントやスイッチなど配線器具も新興国などでM&Aを検討し、世界シェアで首位を目指す。
自動車や住宅関連事業以外でも法人向け事業を強化する。そのうちの一つが業務用冷蔵庫や小売店のショーケースなど食品流通製品事業。国内ではローソンと店舗などを共同開発する。海外ではタイ最大財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループと組み、外食店や食品流通などに専用製品などを納入する方針だ。
もっとも18年度に連結売上高10兆円が実現できるか、不透明な部分も残る。パナソニックは過去にも成長を目指し、三洋電機買収や薄型パネル工場など大型投資で失敗している。「過去の大規模投資の多くが減損につながった反省を生かす」(津賀社長)としているが、最近のパナソニックの買収は「高値づかみをしている」(証券アナリスト)との指摘もある。
津賀社長は12年6月に就任以降、プラズマテレビ撤退など矢継ぎ早に構造改革を打ち出し、業績を大きく回復させた。ただ打つ手が分かりやすかった構造改革に比べ、成長戦略は結果が見通しにくい。足元の株価は1500円台で足踏みしている。「一年一年が勝負の年になる」。津賀社長は会見でこう語った。