政府の中央防災会議は30日、南海トラフ地震に備え、救助部隊や物資輸送の応急活動計画をまとめた。大きな被害が想定される中部、近畿、四国、九州の10県に被災地以外から自衛隊、警察、消防の最大14万2600人を3日以内に投入する。東日本大震災で燃料供給が滞った反省をふまえ、主要輸送ルートに石油の重点供給先を設定。現場からの要請を待たずに物資や燃料を届ける方針も明記した。
政府は南海トラフ地震で最悪32万人の死者が出ると想定。同会議は昨年3月に定めた南海トラフ地震基本計画に基づき、地震直後に人や物資を円滑に届けるための具体的な計画をまとめた。
活動計画では静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、大分、宮崎の10県を重点支援の対象とした。
南海トラフ地震が発生した場合、3日以内に、自衛隊員を最大11万人、10県以外の都道府県の警察官同1万6千人、消防隊員同1万6600人を被災地に派遣する。同地震の人的被害の割合は中部地方が約4割、四国が約3割などと想定されている。最大14万2600人の救助部隊の具体的な派遣先は被災状況に応じて政府が判断する。
医療支援では、全国約1300の災害派遣医療チーム(DMAT)が被災に対応する。内陸部で被害が比較的小さいとみられる静岡空港、松山空港、高松空港、熊本空港など6空港にDMATを重点配置する。各空港で負傷者を受け入れて緊急処置し、重症患者は被災地外の医療機関に航空機などで搬送する。
救援物資については発生3日間は自治体や家庭の備蓄で対応することを見込み、4~7日目の食料7100万食、飲料水、毛布600万枚などを各省庁が所管する業界団体などから調達し、輸送する。「被災自治体の要請を待たず、必要不可欠な物資は緊急輸送する」との考えを強調した。
東日本大震災ではガソリンなどの燃料不足が深刻な問題となった。このため「沿岸部の製油所などが被災しても救援に必要な燃料を供給する必要がある」とし、石油会社が系列を超えて協力し、供給体制を整えることを盛り込んだ。
被災地の基幹道路や、負傷者搬送の拠点となる空港のガソリンスタンドなどへの供給を重視し、優先的に石油を届け続けることを決めた。高速道路など主要ルートにある40カ所を重点供給先に選んだ。
中央防災会議は30日、同計画を決定。赤沢亮正内閣府副大臣は「計画にもとづき、各省庁の連携と訓練を進める」と述べた。
■南海トラフ地震 静岡県沖から九州沖にかけて延びる海底の溝(トラフ)に沿って発生する可能性のある大地震。政府の中央防災会議は東日本大震災を受けて被害想定を見直し、マグニチュード(M)9クラスの地震が発生した場合、最悪で死者が32万人、経済被害が220兆円に上ると試算した。昨年3月にまとめた基本計画では想定の死者数を10年間で8割減らす目標を掲げた。