本を気軽に手にとって読む楽しさを知ってほしい――。富山市の中心部に2月、子供の本専門の古本屋「デフォー」が開店した。店内には絵本や小中学生向けの小説など約1600冊が並び、試し読みのための机や触れて遊べる「仕掛け絵本」も置かれている。
店の名前は、店主の田中史子さん(60)が子供のころに大好きだった小説「ロビンソン・クルーソー」の作者、ダニエル・デフォーにちなんだ。
田中さんは富山県立図書館の司書として長年勤務し、2012年に退職した。200万部を超えるベストセラーの絵本「100万回生きたねこ」を読んだのをきっかけに絵本の良さを再発見し、「退職後は子供の本を扱う店を開きたい」と考えていた。
古本屋にしたのは、新刊は1冊千円以上するものが多く、「子育てに欠かせないものなのに、若い親が買うには高すぎる」と思ったから。
知人に呼び掛け、各家庭で眠る子供の本約千冊を集めた。「安く買って安く売る」がモットーで、持ち込まれた本は原則10円で買い取り、1冊100~500円で販売する。
「捨てるのはしのびない」と本を持ち込んでくれる人や、小遣いを手に訪れる子も増えており、「処分されていたかもしれない本が誰かの手に渡り、また楽しんでもらえるのは、本にとっても幸せ」と田中さん。
ゲームやスマートフォンに熱中する子供が増え、活字離れが進んでいると感じている。田中さんは「押しつけるつもりはないけれど、やっぱり読まないのはもったいない」と、本の楽しさが伝わる店づくりを目指す。〔共同〕