財務省が22日発表した2015年3月の貿易統計速報(通関ベース)で、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は2293億円の黒字に転換した。黒字は12年6月以来2年9カ月ぶり。円安を受けて米国向けを中心に輸出が好調だった。原油安で輸入額が減ったことも寄与した。財務省は黒字が定着するかは不透明としているものの、貿易収支は改善基調をたどっている。
輸出額は6兆9274億円で、前年同月から8.5%増えた。増加は7カ月連続。米国向けの自動車のほか、ベトナムや中国向けの電子部品や工作機械の輸出が伸びた。
3月の円相場の平均は1ドル=119円86銭と、前年同月より17.2%の円安で、輸出企業の競争力が高まった。海外経済の緩やかな回復基調も輸出の追い風になった。
一方、輸入は前年同期比14.5%減の6兆6981億円と3カ月連続で減った。主因は原油・天然ガス価格の下落だ。東日本大震災後の原子力発電所の運転停止で火力発電所向けの燃料輸入は増加傾向だが、金額ベースでは輸入が急減した。サウジアラビアなどからの原油の輸入額は前年同月比で50.7%減った。
主な国別の貿易収支をみると、対米国では黒字が6031億円と前年同月より2割近く増えた。対中国では1742億円の赤字だったが、赤字額は前年同月より7割近く減った。昨年より遅い春節の影響で中国企業の生産活動が減り、日本の輸入が減ったためだ。
ただ、財務省は「3月は決算期末を意識した企業の輸出増で黒字が出やすく、4月以降も黒字が続くかは分からない」と指摘。原油価格の行方も不透明だとしている。
同時に発表した2014年度の貿易収支は9兆1343億円で、4年連続の赤字となった。赤字額は過去最大だった13年度の約13兆7500億円に次いで2番目の規模だった。
自動車や電子部品の好調で輸出は74兆6709億円と、13年度比で5.4%増えた。輸入は83兆8051億円と同1%減った。原油や石油製品の輸入額が減ったためで、輸入の減少は5年ぶり。