首相官邸(東京・永田町)の屋上で22日午前、小型の無人飛行機(ドローン)が落下しているのが見つかり、警視庁が機体を調べた結果、微量の放射性セシウムを検出した。ドローンは農業分野で導入が進むなど用途が広がっているが、現状では飛行に関する規制がほぼない。今回は誰にも気づかれずに官邸上空を飛行しており、テロ対策の弱点が顕在化した。
首相官邸の屋上で見つかったドローン(22日午後)
警視庁によると、見つかったドローンは直径約50センチで、4つのプロペラが付いていた。液体が入った茶色いプラスチック製容器(直径3センチ、高さ10センチ)を積載しており、この容器からセシウム134とセシウム137を検出し、毎時1マイクロシーベルトのガンマ線が測定された。
警視庁は直ちに人体に影響を与えるものではないとしているが、いずれも原子力発電などで発生する物質で、自然界に存在しないという。容器には放射線を示すマークののシールが貼られ、放射能があることを示す「RADIOACTIVE」との表記があった。
機体にはほかに、小型のデジタルカメラと発煙筒のようなもの2本が取り付けられていた。警視庁は何者かが何らかの意図を持って官邸に飛ばした疑いもあるとみて、威力業務妨害容疑などを視野に捜査している。
ドローンは無線で遠隔操作できるうえ、搭載されている全地球測位システム(GPS)の機能を使えば、目的地まで自動で飛行する。農業分野などで有用性が注目され、用途が広がる一方で、誰でも簡単に飛ばせることから、テロなどに悪用されるとの懸念はかねて指摘されてきた。
米ワシントンで今年1月、ホワイトハウス敷地内にドローンが墜落する事故があった。警視庁はこれ以降、首相官邸や皇居周辺で飛行物体への警戒を強めたが、今回機体や操縦者を事前に見つけることはできなかった。
菅義偉官房長官は22日午後の記者会見で「警察において徹底した捜査を行う」と強調し、2020年開催の東京五輪も見据え、テロ対策を見直す考えを示した。
だが「空から侵入する機体を目視で見つけるのは困難」(警視庁幹部)。レーダーなどによる探知も周辺の通信に影響を与える可能性があるため現実的ではないとしており、有効な対策を見いだせていないのが実情だ。