【ニューヨーク=高橋里奈】岸田文雄外相は27日、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説し「世界にはまだ1万6000発以上の核兵器があり、今こそ核軍縮を加速させる必要がある」と述べ、核弾頭の削減を着実に進めるため核保有国に削減数の定期的な報告を求めた。また、国際的な原子力の平和利用に日本として今後5年で2500万ドル(約30億円)を拠出することも明言した。
同会議で日本の外相が演説するのは10年ぶり。岸田外相は冒頭、自身が広島県出身であることにふれ「被爆地の思いを胸に、この会議で『核兵器のない世界』を目指した取り組みを前進させる」と述べた。
前回の2010年の会議から核保有国による核兵器削減の取り組みが進まなかったことを念頭に「核戦力の透明性の確保が重要」と指摘。正確な核弾頭数がわからなければ「削減交渉は成り立たない」と述べ、核保有国に「具体的かつ定期的な報告を求める」と訴えた。
北朝鮮の核ミサイル開発については「国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威で、NPT体制への深刻な挑戦」と非難し「力強いメッセージを出すべきだ」と主張した。
今年は原爆投下から70年となる。岸田外相は、被爆の実態を国際社会に知ってもらうために「核保有国を含めた世界の政治指導者や若者を広島・長崎に招きたい」との意向も示した。
岸田外相はワシントンやキューバを訪問後、5月4日に帰国する予定。