ドイツで17日から開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明案から、これまで声明に盛り込まれていた「保護主義に対抗する」という文言が削除されていることが分かった。今回のG20はトランプ米大統領就任後初めてで、保護主義的な姿勢を強める米国に配慮した可能性がある。
昨年7月に中国・成都で開かれたG20財務相会議の共同声明は、「我々はあらゆる形態の保護主義に対抗する」と明記していた。しかし、複数の関係者によると、今回の声明原案には入っておらず、代わりに「公平で開かれた貿易システムを維持する」という米国の主張に近い表現を盛り込むことも検討されたという。ただ、最新の案では、この表現も削除され、調整が続いている。
背景には、「国境税」の導入など保護主義的な政策を掲げるトランプ政権への配慮があるとみられる。政権交代直後で米国の事務方の態勢が整っていないこともあり、議長国のドイツは貿易に関する議論を財務相会議から切り離し、7月の首脳会議で議論する方向で調整しているという。
G20での保護主義に反対する表現は、首脳会議の宣言には2008年の初会合以降、毎回盛り込まれており、財務相会議でも14年を除き毎年入っている。
一方、為替については「通貨の競争的な切り下げを回避すること」や「競争力のために為替レートを目標にしない」といった、これまでのG20の合意内容を米国も支持しており、従来の表現をほぼ維持する方向で調整が進んでいる。(五十嵐大介=ワシントン、鬼原民幸)