【ニューデリー=黒沼勇史】25日に起きたネパール大地震で、近隣国を含めた死者数は29日に5100人を超えた。首都カトマンズでは28日夜、約80時間ぶりに男性が救出されたが、日本を含む各国の支援部隊にとっても人命救助は厳しい時間との闘いになっている。一方、「外国の救助隊はこれ以上必要ない」とするネパール当局の発言が伝わるなど、救助の現場では混乱も生じている。
ネパール警察は29日午後、地震による同国での死者は5021人、負傷者は1万226人に達したと発表した。隣国インドでは75人、中国では25人、バングラデシュでは4人が死亡している。
大地震の発生は25日午前11時56分(日本時間同日午後3時11分)。生存率が急低下するとされる発生後72時間が過ぎた28日夜、カトマンズでは、倒壊した集合住宅から約80時間ぶりに20代の男性が救助された。
ロイター通信によると、同室には3人の遺体があり、救護した医師は、飲まず食わずの状態の中での生還は「彼の強い意志によるもの」と話しているという。ネパールとフランスの捜索・救助チームが救出した。
日本の国際緊急援助隊も続々と現地入りしている。28日に救助チーム70人が到着し、カトマンズで捜索活動を開始。29日には医療チーム46人と自衛隊の先遣隊20人も現地入りし、活動に加わる予定だ。
ただ、ネパール政府が外国の救助隊の受け入れに難色を示し始めたとも伝わる。ネパール当局者は28日、各国支援組織に対して「既に(ネパールの)上空や地上に到着済みなら支援してほしいが、自国からの離陸前なら来ないでほしい」と語ったという。ロイター通信が国連開発計画(UNDP)の現地事務所幹部の話として報じた。
救助現場では情報が錯綜(さくそう)し、混乱も生じている。生存者情報を基にオランダやフランス、トルコの救助チームが現場に急行したところ誤情報だったと判明したケースもある。「(ネパール当局は)活動拠点の設置を許可してくれただけで、あとは何一つしてもらっていない」(オランダの支援隊)との不満も報じられている。
現地紙カトマンズ・ポスト(電子版)は29日付の社説で「ネパール政府が現場でどう動いているのかに関する情報を効率的に共有できていない」として政府の対応の悪さを批判。改善できなければ「世界の良心は無駄になる」と結んだ。