トランスジェンダーの女子の入学について検討を始める日本女子大=東京都文京区目白台
日本女子大学(東京都文京区)が、男性の体で生まれたが、女性として生きるトランスジェンダーの学生を受け入れるかどうかの検討を新年度から始める。体の性別を入学の前提にしてきた女子大だが、さまざまな性のあり方への認識が広がる中、生物学的に男性に生まれた人にも門戸を開く可能性が出てきた。
伝統校の日本女子大が議論を始めることで、他の女子大に影響を与える可能性もある。文部科学省と同大は「他の女子大で、同様の動きがあるとは聞いていない」としている。
検討のきっかけは2015年末、神奈川県に住む小学4年生の保護者からの問い合わせだった。この児童は戸籍上は男子だが、性同一性障害と診断され、女子として生活している。同大や付属校の入試の出願資格には、「女子」との規定があるが、同大付属中の受験を希望していた。
これを受け、同大は16年8月、付属の幼稚園、小・中・高校、大学の学部代表らで「LGBTに関する検討プロジェクトチーム」(座長・小山(おやま)聡子副学長)を設け、議論した。「多様な学生を受け入れるべきだ」という積極論の一方、「学生や生徒、保護者、教員の理解が浸透しているとはいえない」などの慎重論もあり、同年10月末、現段階では受け入れは難しいと結論づけた。
だが同時に、まず大学で受け入れをめぐる検討を先行させることも決め、11月に保護者に伝えた。新年度に学内に会議を設け、すでにいる性的少数者の支援も含め、受け入れの可否を検討する。女子大の中には、戸籍の性別を女性に変更すれば入学できるところもあるが、20歳以上や性別適合手術などの要件があり、ハードルが高い。女子大が仮に受け入れを決める場合には、医師の診断など具体的な要件をどうするかが課題になる。
米国の女子大の中には、男性として生まれても女性と自認していたり、女性として生まれたが女性とも男性とも自認していなかったりする「多様な女子」を受け入れるところがある。
小山副学長は「『女子とは何か』の判断基準の検討は、女子大の価値や存在意義を考えることに重なる。社会的な弱者を支え、多様性を重んじる米国の女子大の方針はすばらしいと思うが、まず、学生や保護者らの声を聞き、多角的に議論したい」と話している。(編集委員・氏岡真弓、杉山麻里子)
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〈トランスジェンダー〉 体と心の性が一致せず、自らの性に対し「違和」を持つ人。病院で「性同一性障害」の診断を受ける人もいる。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルとともに「LGBT」に含まれる。電通ダイバーシティ・ラボ(東京)が行った国内の成人約7万人を対象にした調査(15年)では、LGBTなど性的少数者に当たる人は全体の7・6%。トランスジェンダーは0・7%とされる。