17日に火災が起きた川崎市川崎区日進町にある2つの簡易宿泊所には生活保護を受ける高齢者が多く住んでいた。家族と疎遠な人もいる。住み慣れた「わが家」を突然失った宿泊者は「これからどうしたらいいのか……」と不安を募らせる。
火災が起きたのは簡易宿泊所が多い地域。昔は日雇いの仕事をする人が宿泊していたが、だんだんと生活保護を受ける人が集まるようになり、今は働けなくなった高齢者が多いという。
日進町には、主にこうした生活保護受給者が利用する簡易宿泊所が数十軒ある。布団とテレビを備えた3畳程度の個室で1泊2千円前後。台所や風呂、トイレは共用だ。
無職の男性(66)は事業に失敗して仕事を転々とした後、3年前から「吉田屋」に住んでいた。妻と離婚し、娘とも疎遠で「働く気力がない」。部屋は3畳一間で、若い人はほとんどいない。ほかの宿泊者の名前は知らないといい、「みんな訳ありで自分のことは話さなかった」と語る。
「よしの」から避難した無職の男性(74)は20代後半から日雇いの仕事をして生計を立ててきた。男性は「現金をすぐにもらえる仕事は魅力的だった。金があるときは競輪、競馬、底を突けば仕事。自由で気楽なのが一番」と振り返る。
体調を崩し、生活保護を受給し始めてから2畳部屋で17年間暮らしていたが、17日の火災では携帯電話と財布だけ持って逃げてきた。避難先の別の簡易宿泊所にいる男性は「落ち着くまでしばらくかかる。市や宿の責任者はどう対応してくれるのだろうか」と不安そうに話した。〔共同〕