川崎市川崎区の簡易宿泊所火災で、出火元の宿泊所「吉田屋」が建築基準法で義務付けられた「耐火建築物」に改めることを怠り木造のまま増築した疑いがあることが19日、市への取材で分かった。火が早く回り、逃げ遅れにつながった可能性がある。増築の情報が市の関係部局で共有されなかったことも判明した。
福田紀彦市長は19日の記者会見で「実態を調査していかなければならない」と述べ、問題がなかったか確認する意向を示した。
市建築指導課によると、3階建て以上の宿泊施設について建築基準法は、鉄筋コンクリート造りなどの耐火建築物とするよう義務付けている。
吉田屋は1960年の建築確認申請で「木造2階建て」としたが、火災時は事実上3階建てだった。建物の安全性を管轄する建築指導課は完成した建物を検査しておらず、3階建てとは知らなかったという。
消防局の防火対象物台帳には「増築があった」と87年に記載された。一方、川崎区衛生課によると、旅館業法に基づいて営業者を個人から法人に変える許可を2003年に出した際、関連書類として吉田屋から提出を受けた図面に「2階上部」と記されていた。
消防局にも区衛生課にも、建築指導課に情報提供したという記録はなかった。消防局は「(当時の)判断の詳細は分からない」とし、区衛生課は「(関係した手続きが)建築の構造が変わったということではないので、情報提供が必要との判断に至らなかったのだと思う」としている。
火災は17日未明に発生。吉田屋の焼け跡から市川実さん(48)ら5人の遺体が見つかった。〔共同〕