【ワシントン=川合智之】世界銀行は10日、最新の世界経済見通し(GEP)を発表し、2015年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率の推定を2.8%に下方修正した。前回1月時点の予測は3.0%だった。16年は3.3%と緩やかに成長する見通しを据え置き、減速は一時的との見方を示した。
世銀は下方修正の要因として、原油安と資金調達コストの上昇を挙げた。原油安は特に1次産品輸出に依存する国が多い途上国への打撃が大きく電気や交通、河川などのインフラ(社会基盤)整備の遅れにつながっているとした。
資金調達コストの上昇については「米国の利上げが大きな影を落とす」(カウシィク・バス上級副総裁)とした。今後数カ月に新興・途上国の調達コストが上昇する可能性があるとしたうえで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げで新興市場への資金の流れがGDP比で1.8ポイント減る恐れがあると分析した。
キム世銀総裁は「途上国は金融危機後の世界の経済成長を担う原動力となってきたが、厳しい経済情勢に直面している」と指摘した。低中所得国への教育・保健の投資、インフラ改善を支援する意向を示した。
国営石油会社を巡る汚職疑惑があるブラジルや、米欧などの経済制裁が続くロシアではマイナス成長が続く見通し。一方、日本やユーロ圏の景気は回復基調にあり、高所得国の成長率は15、16年に2.0、2.4%と順調に推移するとみている。
中国の成長率は15年に7.1%と緩やかに減速する。インドは改革による信頼向上と資金流入で7.5%に押し上げられる見通しだ。中東・北アフリカ地域は原油安と安全保障上の懸念で、2.2%と横ばいで推移するとみられる。