【ソウル=加藤宏一】韓国で中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染拡大の影響が一段と広がっている。韓国政府は15日、感染者が死者16人を含む150人になったと発表。感染者と接触し、自宅などで経過観察措置がとられる隔離対象者の中には日本人ら外国人も含まれることが明らかになった。韓国旅行を中止した外国人観光客は10万人を超え、旅行業界が打撃を受けている。
ソウル市内で15日、MERSコロナウイルス対策のため、バスの座席などを消毒する作業員=AP
保健福祉省は同日の記者会見で、5200人超の隔離対象者のうち、日本人ら20~30人の外国人が含まれていると明かした。いずれも自宅での隔離対象者で、ウイルス検査の結果は陰性という。在韓日本大使館の関係者によると、隔離対象者の日本人はすでに日本に帰国し、日本政府が経過観察している。この日本人がなぜ出国できたかは不明だが、隔離対象者との通告を受ける前に出国した可能性もある。
大使館関係者は「(隔離対象者の)日本人が感染した、感染の疑いがあるという情報は伝わっていない」としている。
隔離対象者は感染が確認された人と同じ時間帯に病院に滞在したことなどを理由に自宅にとどまるよう求められた人が大半を占める。MERSコロナウイルスの潜伏期間は最大2週間で、すでに隔離が解かれた人もいる。韓国の政府関係者は「地域社会にMERSの感染は広がっておらず、統制可能な状況にある」と強調した。
文化体育観光省はMERSの感染拡大を受け、13日までに約10万8千人の外国人観光客が韓国旅行を中止したと発表した。中国や香港、台湾など中華圏が8万人超と全体の75%を占めており、日本が13%の1万4千人超でこれに続く。1~11日の外国人旅行客は前年同期比24.6%減った。
同省の当局者によると、外国人観光客が韓国滞在時にMERSに感染した場合、治療費を補償する保険商品を開発する方針を示した。観光業界を支援するため、総額720億ウォン(約80億円)規模の運転資金の融資制度も設ける予定だ。