【ワシントン=川合智之】米国務省は19日、2014年版のテロ報告書を公表した。14年に世界で発生したテロは前年比35%増の1万3463件、死者は同81%増の3万2727人だった。主な特徴として、過激派組織「イスラム国」(IS)による前例のない領地奪取、外国人戦闘員の流入、共鳴者による西欧での攻撃をあげた。斬首など残忍な行為で住民をおびえさせる行動が目立ったという。
テロの死者はナイジェリアやイラク、アフガニスタンなどで大幅に増えた。テロリストの自爆攻撃が増えたことを反映し、死者の19%が加害者だったという。ISがイラクで少数派のヤジド派住民を誘拐するなどの動きを受け、人質は9428人と前年の3倍に急増した。
報告書は、シリアで続く内戦が世界のテロ行為の引き金になったと指摘。90カ国以上から1万6千人超の外国人戦闘員がシリアに入り、アフガニスタンなどを超えて過去20年で最大規模の流入となった。
ISはソーシャルメディアを活用して宣伝や勧誘活動を実施。国際テロ組織アルカイダや関連グループは、イエメンやシリア、リビアなどで勢力を伸ばした。ナイジェリアなどで活動するイスラム過激派「ボコ・ハラム」は無差別攻撃や子供の誘拐などの残忍さがISと共通すると分析した。
米は有志連合とともにISに対抗する方針で、国連安全保障理事会を通じてテロ情報の共有などで多国間協力を進めていると評価した。