日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、内需主導の景気回復がじわりと広がっていることを示した。大企業製造業の設備投資計画は11年ぶりの高い伸び率。大企業に比べ出遅れていた中小企業にも改善の兆しが出始めた。一方、中国経済の減速やギリシャの債務返済問題など海外経済の動向をリスクとみる動きも見られた。
大企業製造業の2015年度の設備投資計画は前年度比18.7%増。円安基調や好業績を背景に、老朽設備の更新で生産性を高める動きが目立つ。日本経済新聞社の設備投資動向調査によると、自動車や電機など加工業種の投資増が化学など素材産業に波及しつつある。
過去の6月調査と比べると、04年度以来の高さとなる。大企業の計画は年度後半にかけて伸び率が鈍くなる傾向があるが、これまでの実績対比では、バブル期の1989年度(22.2%)以来の伸び率となる。
大企業製造業を中心とした設備投資需要は、投資動向に敏感な機械産業の業況判断指数(DI、「良い」―「悪い」)の改善に結びついた。中小企業のはん用機械のDIがプラス16と過去最高を記録するなど中小企業の景況感も押し上げた。
非製造業でも内需主導の回復が中小企業にしみ出しつつある。中小企業の宿泊・飲食サービスのDIは04年3月の調査開始以来、初めてプラスに転じた。「訪日外国人の増加の恩恵は大企業ほど受けないが、日本人の国内旅行が好調で業況が改善した」(日銀)。不動産も景気回復に伴うオフィス空室率の低下などを背景に、07年9月以来のプラス幅となった。
景況感が改善するなか、雇用面の需給は引き締まっている。大企業製造業から中小企業非製造業まで全ての規模・業種で、雇用は「不足」が「過剰」を上回った。全規模全産業の新卒採用計画は15年度が前年度比8.0%、16年度は同5.0%の増加となり、11年度から6年連続のプラス計画を立てた。
リスクは海外経済の動向だ。中国経済の減速で鋼板などの需給が緩みがちな鉄鋼のDIはマイナスに転じた。5月の中国向け輸出が大きく落ち込んだ自動車の景況感も悪化した。大企業製造業の海外での製商品需給判断をみると、「需要超過」から「供給超過」を差し引くとマイナス7。先行きは2ポイントの改善を見込み、海外需要も盛り返すとみている。