電気事業連合会と新電力(特定規模電気事業者)19社は2日までに、2030年度の温暖化ガスの排出量を13年度比で35%程度減らす業界の自主目標の原案をまとめた。排出の総量ではなく電力需要に制約されない販売量1キロワット時当たりの排出量を削減目標にする方向だ。電事連と新電力が共通目標を作るのは初めてで、原子力発電所の再稼働や老朽原発の運転延長を前提としている。
電力業界が温暖化対策の自主目標作りを急いだ背景には、大阪ガスとJパワーなどが山口県宇部市で進める大型石炭火力発電所の建設計画を前に進める狙いがある。
計画について望月義夫環境相は6月12日に環境影響評価(アセスメント)法に基づき「是認しがたい」との意見を出した。これに対し、宮沢洋一経済産業相は同26日の記者会見で「早期に地球温暖化対策に向けた電力業界全体の自主的枠組みを構築するように」と促していた。今後は今回の「回答」を環境省側が受け入れるかが焦点となる。
原案によると、電力業界は電力販売量1キロワット時当たりの温暖化ガスの排出量を30年度に0.37キログラム程度とする方向で調整している。13年度の排出量は0.57キログラムで、35%削減する計算だ。東日本大震災が発生した10年度よりも減らす方針という。
目標実現に向け、安全確保を前提に原発を活用したり、水力、地熱、太陽光などの再生可能エネルギー、発電効率の高い火力発電の導入拡大などを想定した。
ただ、今回の原案では排出量全体の削減目標や各社の個別目標も示していない。目標達成に向け、業界内で具体的な規則などを作る方向で調整しているが、実効性が課題になりそうだ。
政府は30年度の望ましい電源構成(ベストミックス)案で温暖化ガス排出量の少ない原子力の比率を全体の発電量の20~22%とし、温暖化ガス排出量を13年度比26%削減する目標案を固めた。
電事連と新電力19社は3月から温暖化対策への共通目標づくりに向けた検討を続けてきた。環境省の北村茂男副大臣は2日の記者会見で「事実関係は承知していないが、削減目標を達成する実効的な枠組みになっているかしっかりと確認したい」などと話した。