政府は2日、首相の諮問機関である政府税制調査会(会長・中里実東大教授)を開き、所得税の改革に向けた総点検に着手した。働く女性を増やし、子育て世帯を支援するため、税負担を軽くする制度などを根本から見直す。年齢にかかわらず所得や資産が多い人の負担を重くするなど少子高齢化の痛みを和らげる改革が必要になる。政府が目標とする実質2%成長を後押しする税体系への移行を目指す。
政府は6月30日に決めた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に「税体系全般を総点検する」と明記。方向性として「低所得若年層の活力維持」や「女性の活躍推進・子ども子育て支援」などを掲げた。
骨太方針を受けて2日始動した政府税調では大学教授らが所得税改革の必要性を訴えた。中里会長は「四半世紀で経済社会の構造がどう変化し、税制とどうミスマッチが生じているか多角的に議論する」と述べた。
政府税調は今秋に中間とりまとめを行い、来夏に答申する。本格的な制度改正は2017年度からになりそうだ。
所得税の控除など基本的な仕組みは主に1960年代までにできた。夫が会社員で妻が専業主婦の世帯が多数を占め、増え続ける人口が経済を押し上げた時代だ。サラリーマン世帯を中心に中間層が広がるなかで、世帯の所得格差もそれほど大きくなかった。
現在は共働きが勤労者世帯の多数派。人口は減少局面に入り、増加する高齢者を支える負担が働き手にのしかかっている。右肩上がりの社会構造の中でできた税制が時代に合わなくなっている。
例えば専業主婦世帯の税負担を軽くする配偶者控除は、妻が年収103万円以下に働き方を抑えることにつながっているとの指摘がある。働く女性を増やして労働力を増やすことが求められる時代に副作用が目立つ。政府税調は妻の年収に関係なく、すべての夫婦世帯を対象とした新たな控除をつくる案を軸に議論を深める見通しだ。
会社員の受ける給与所得控除よりも、年金をもらう高齢者の公的年金等控除の方が手厚くなっている点も課題だ。
財務省は「消費は高齢者の年金に支えられ、その年金を若年層が負担する脆弱な構造」と指摘する。世代間の公平性の観点から、高齢者を含めて所得や資産が多い人の負担を増やすことが必要になりそうだ。
高齢者を支える現役世代への目配りも焦点。特別委員の新浪剛史サントリーホールディングス社長は「若年層の負担が過度で、資産の多い高齢者が大幅な受益超過になっている」と指摘した。特に若年の低所得者の税負担を、税額控除などの仕組みで軽くすることが議論される見通しだ。
会議では給与所得や事業所得、不動産所得などに細かく分かれている現行の所得区分の見直し論も出た。事業所得と不動産所得など区分の線引きがあいまいなのに、税負担に差が出る場合があるとの指摘がある。
ただ調整は難航が必至だ。自民党は配偶者控除の見直しに慎重論が根強い。来年に参院選が控え、増税となる人が多い改革には与党内の強い反発も予想される。