世界最高のサッカー選手になりたいと願う少女は、小学校の卒業文集にもう一つの夢もつづった。「相手の気持ちを考えて話せる人になりたい」。少女はなでしこジャパンの大黒柱、宮間あや選手(30)。2つの夢を胸に臨んだ世界一まであと一歩届かなかったが、夢への道は続く。
九十九里浜に面する千葉県の大網白里町(現大網白里市)に生まれ、小学1年生でサッカーを始めた。男の子に比べても抜きんでた存在。「一人でゴールを決めちゃうからつまんない」と同級生から不満が漏れるほどだった。
町立白里小学校で、負けん気が強く、頭一つも二つも飛び出た“出るくい”は、周りと衝突することもあった。
卒業文集には、4年生時に担任から「元気があっていいね。でも、友達のことをちょっと考えてもいいんじゃない」と諭されたことに触れた。将来の夢を「世界中のダレにも負けないサッカープレイヤー」と記した文集に、人の気持ちが分かる人になりたいという「もう一つの夢」を加えた。
5、6年時に担任だった高木康博さん(47)は数年前、地元の講演会で久しぶりに再会し、胸を熱くした。小学生の時にうそをつき、いたずらを他人のせいにした宮間選手に「仲間のことを考えないやつはサッカーなんかできない」と叱った。宮間選手が「あの言葉がなければ今はない」と忘れずに感謝の言葉で返してくれたからだ。
宮間選手は決勝の試合後のインタビューで、優勝を逃したことについて「本当に申し訳ないです」と何度も口にし、応援してくれた人に謝った。連覇の夢はかなわなかった。だが、代わりに「最高の仲間」を手に入れたと胸を張った。〔共同〕