黒柳徹子さん(下村一喜氏撮影)
3月8日は国際女性デー。60年以上にわたりテレビや舞台で活躍し続けてきた黒柳徹子さんは「自分は自分、人は人。人と自分を比べないで」と語ります。
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【投稿募集】#女子だからって言わないで
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25歳から30歳ごろは一番嫌だったわね。
テレビ放送が始まった1953年、NHK専属のテレビ女優1期生になりました。とても自由な家庭と学校で育ちましたし、女優という仕事は女性にしかできないので、あまり「女だから」と制約を感じることなく生きてきましたけど、20代後半はちょっと違った。
「そういうの知ってる」と言うと、「知ったかぶり」とか「生意気」とか言われる。「知らない」って言えば「かまとと」って言われる。ほんと嫌になっちゃう。30を過ぎたら言われなくなるだろうと思って、30歳になった時は「あー、せいせいする」って思いましたね。
■「男の世界だなー」
40歳になる少し前、ニュースショーの司会を頼まれました。それまでニュースショーの司会といえば男性。日本で初めての女性が中心になるニュースショーでした。
その時はすごかったわね。番組スタッフは私以外は全員男性、しかも年上。打ち合わせなんかで、やっぱり頭からものを言うような人がいたり。「その次にこれをやるのは変だと思いますけど」と私が言ったりすると、「何でもいいからやりゃあいいんだよ」と言う人がいたり。
その時は「男の世界だなー」と思いました。女の立場が弱いって、こういうことを言うんだなあ。「何でもいいからやりゃあいいんだよ」だなんて、そんなのってないんじゃない、って。
戦争中だった8歳の頃。みぞれが降る寒い日に、寒さと空腹で泣きながら歩いていたら、おまわりさんに「おい、こら。なんで泣いてるんだ」と呼ばれたの。「寒いからです」って答えたら、「戦地の兵隊さんのことを考えたら、泣いてなんかいられないだろ」って怒鳴られて。男の人にガンガン言われた時、そんなことを思い出しました。
でもね。結局のところ、自分は自分、人は人。私の人格もよく知らずにガンガン言う人は、ろくなもんじゃないと思って。「はい」とは言いながらも、気にしない。私は私よ、勝手に言ってれば?って。
子どもの頃から、学校でも家庭でも人格を大切にしてもらったお陰で、自分が何ができるかは分からないけど「何かはできるだろう」とずっと思ってきました。人は人って思えたのは、自己肯定感を育んでもらったことが大きかったと思います。
人と自分を比べないことも大切ね。比べたらキリがないの。「なんであの人はきれいなの?」「あの人のボーイフレンドお金持ちでいいわね」なんて、人と比べていいことは何もない。私は私。自分でやれることは自分でやっていく。女の子たちには、そんなふうに生きてほしいわね。
■楽しく生きるためには外見も
世界を広く見ること、いろんなことに関心を持つこと、よその国で悲しい事件があったら知ろうとすること。そういうことも大切ね。「自分は大丈夫。だから関係ない」ではなくて。
何も、海外に出てボランティアをするってことじゃなくてもいいの。ちょっと知っておくってことだって、何か人に優しくできることにつながると思うんですよね。隣のおばあさんに「スーパーに行きますけど何か買ってきましょうか」と声をかけるとか。そのほうが、自分自身も豊かな人生を送れると思うの。
男の人に比べると、女の人は外見のことでいろいろ言われがち。それが嫌だと思う人もいるでしょうけれど、私はなるべくきれいでいようと思っています。酒もたばこもやらないし、食べ物も気をつけている。「ご飯食べに行こうか」と誘ってくれるとか、そういうのって大事だと思うの。男性のためというより、自分が楽しく生きるために必要なことだと思います。
■「厚化粧の女が」すごい不愉快
それから、女の子にというよりも、政治家のことで一つ言いたいの。国会なんかで子どもの話が出たりすると「お前は産んだことないのに」とかって言う議員がいるでしょ。ああいうのは、ほんっとに不愉快ね。「厚化粧の女が」とか。すごい女性蔑視がある。普段は言われても無視すればいいけれど、国会なんかで言うのだけはやめてほしい。「こういうこと言っていいんだ」という気分が社会にも広がってしまうから。
海外には女性の大臣なんて大勢いるけれど、日本は少ない。女性がもっとそういうポジションについて、変なこと言わせないようにしなきゃならないわね。(聞き手・三島あずさ)
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くろやなぎ・てつこ 1933年生まれ。東京都出身。東京音大声楽科卒業。女優。タレント。ユニセフ親善大使。76年に放送が始まった「徹子の部屋」(テレビ朝日系)は、同じ司会者による最多放送記録としてギネス世界記録に認定された。著書に『窓ぎわのトットちゃん』『トットチャンネル』など。昨年9月、インスタグラムを開始。おしゃれでユーモアあふれる写真やコメントが人気を呼び、フォロワーは2月23日現在57万2千人。