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「ラグビーでマイナス、一つもない」 橋下徹さんと花園

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高校時代の練習やチームメートについて語る橋下徹さん=小林一茂撮影


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第96回全国高校ラグビー大会の開幕が27日に迫った。タレント弁護士から大阪府知事、大阪市長へと転身した橋下徹さん(47)も北野(大阪)時代に花園に左WTBとして出場したラガーマンの一人。第67回大会で3回戦に進み、名門・伏見工(京都)に善戦したが12―16で敗れた。「ラグビーをやって、マイナスのことなんて一つもなかった」。思い出と経験は今に生きている。


■虚を突かれ決勝点「今でも腹立つ」


伏見工戦を、「今でも腹立つから見ない。ビデオをもらったけど」と振り返る。1988年元日、43大会ぶり出場の北野とテレビドラマ「スクール・ウォーズ」のモデルになった伏見工。観客がタッチライン際にあふれた注目カードで終盤に痛恨のミスが出た。


12―12の後半終了間際だった。自陣ゴールラインまで10メートルほどの地点で味方が反則し、相手にペナルティーキックを与えた。相手のキッカー、薬師寺大輔選手は超高校級。「絶対に(ペナルティーゴール=PG=を)蹴ると思った。『黄金の左足』と言われていて」。反則の地点から10メートル離れないといけないが、「集中が切れ、みんな一斉に球に背を向けて下がった」。


虚を突かれた。相手はPGを狙わず、軽く蹴って自らで捕球し、そのままインゴールへ。勝ち越しのトライ(当時は4点)を許した。


球から目を離さないという鉄則は刷り込まれていたはずだった。サポートランという練習がある。球を持った選手の背後を「欽ちゃん走りのように」弧を描きながら回り込んでサポートし続ける。球の動きに意識を徹底させるためだ。「クソ暑い真夏の時、吐きそうなくらい、延々とやった」。なのに……。


人生観を決める一つの「ポイント」になった。


「仮にサポートランの練習を100倍やったとしても、あのミスは防げなかった。一番肝心な、まさにこの時のためだったのに。だからこそ故意じゃなければ、とがめてもしょうがない。人間はミスをする。完璧じゃないんだと」


同時に、あの瞬間、誰もが同じプレーを予想したのも練習の結果と自信を持っている。北野は当時は珍しかった「イメージトレーニング」を採り入れていた。


「ジョギングで30分くらい走りながら、将棋盤や駒を使わずに頭の中で将棋をやる、ラグビー版。キックオフ! 敵陣左10メートルライン付近、モール! 相手ラインは浅め! オフサイド気を付けろ! ボール出た! 相手スタンドオフがハイパント! って、バンバン言う。みんなが頭で同じ情景を描く練習を徹底してやった。だからあの瞬間、相手はPGを狙うと15人全員が一致し、後ろを向いちゃった」


■動揺させズレ突く


「考えて、考えて」作り上げたチームだった。軽量だったFW陣はスクラムを「押さずに」、球を入れてから一瞬でバックスに展開する技術を磨いた。


さらにバックスは、攻撃ラインの間隔を「満員電車みたいに体をすり寄せて」、ゴールラインに対しほぼ平行に並んだ。1人目が突っ込んで密集を作り、2次攻撃で勝負する。1人が突っ込んでも、ほぼ同じ場所にバックスが残っているので、ラインを作り直さなくていい。次への備えだ。


「相手を動かして、スキを抜いていく。動くところに必ずズレが生じる。そこからはイメージトレーニングが効いてきて。ほころびがあればそこを突いたり、飛ばして外で勝負したり」


その手法は弁護士、政治家となった時にも生きた。「ラグビーでやってきたことと同じですよ。評論家、論説委員の会議みたいなところで、ああですね、こうですねとやってもしょうがない。おとなしく丁寧にものを言うだけじゃ動かない。ドーンといって、相手が動揺する。ズレが生じる。そういうところを瞬時に突いていく」


ただ当時は、「もう、ラグビー早く辞めたい、と言ってたし。しんどいから練習サボってばっかりだったし」と振り返る。決してチームを引っ張るという存在ではなかった。「普通の高校生ですよ」


中学からラグビーを始めたのも、「大阪市内はラグビーが盛んだったしね、やったら面白かった。闘争心に火が付く」。ラグビーから人生の多くのものを学んだ。「今振り返ると、やってみて、マイナスのことなんてなかった」


■悔い残らぬように


花園を控えた選手たちへはこう伝えたい。「悔いが残らないように一生懸命やって欲しい。悔い残らずやった満足感が死ぬまで続くから。勝ちはうれしいけど、負けたって僕、こんだけしゃべっている(笑)」


さらには「人生最大のポカをまだ高校生の身で、しかも花園の大舞台で経験したから、それから人生怖いものなしで思う存分に歩んで来られた」とも語る。


「だから出場する皆さんは、ミスを怖がらずに思いっきりプレーして欲しい。ミスをすりゃ数年間は引きずるけど、10年過ぎりゃ、もう、無制限に仲間としゃべれるから」


ラグビーへの思い入れは強い。「今、ラグビーを続けて将来どうなれる、というところが見えないよね。サッカーならプロがある。日本協会は選手のキャリアを考えないと」


では要職に就いて改革する思いはありますか?


「報酬次第。アイデアに対しては、お金を出さないとね(笑)」(有田憲一)



はしもと・とおる 1969年生まれ。弁護士。2008年から大阪府知事、11年からは大阪市長を務め、昨年12月に退任。北野高時代にラグビーの高校日本代表候補に選ばれた。



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