マンモグラフィー画像で見た乳腺の状態
女性がかかるがんの中で最も多い乳がん。早期発見のカギを握るのが検診だが、国が40歳以上の女性にすすめる乳房X線撮影(マンモグラフィー)だけでは異常を見つけにくい。乳腺の密度が高い「高濃度乳房」が日本人女性に多いためだ。
■エコー併用、弱点補う
川崎市の風間沙織さん(52)は10年以上マンモグラフィー検診を毎年受けていた。「異常なし」の結果が続き、安心していた。
妹が乳がんになった3年前、マンモと超音波(エコー)の検査を両方受けた。医師はマンモの画像を見て「これではよく見えないね」。エコー検査で左胸に約1・7センチの腫瘍(しゅよう)が見つかり、病理検査でがんと確定、手術で全部摘出した。後で自分の乳房が「不均一高濃度」と知った。
乳房内は母乳を作る乳腺が張り巡らされ、乳腺密度が高い順に、「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」の4段階に分類される。「高濃度」と「不均一高濃度」は日本人の約5~8割とされる。
マンモではやわらかい脂肪は黒く、かたい乳腺は白く写る。腫瘍のしこりも白く写るため、中村清吾・昭和大教授(乳腺外科)は「乳腺が発達しているほど画像が白く見え、乳腺の白いかげに隠れてがんを見つけにくい」と話す。
そこで検診の新たな選択肢として、マンモとエコーの併用が期待されている。エコーでは腫瘍が黒く、乳腺が白く写る。40代の日本女性7万6千人が対象の大規模調査「J―START」で、両方を併用した場合、マンモだけより乳がん発見率が1・5倍になった。研究リーダーの大内憲明・東北大教授(乳腺・内分泌外科)は「併用でエコーがマンモの弱点を補う可能性が示された。ただ死亡率を減らせるかどうかの検証はこれから」と話す。
がんが見つかっても結果的に治療が不要だったり、精密検査でがんでないとわかったりすることもある。今のところ、国はエコーを推奨しておらず、一部自治体を除き、希望者は基本的に全額自己負担だ。
NPO法人・乳がん画像診断ネットワーク理事長で、相良病院ブレストセンター(鹿児島市)の戸崎光宏・放射線科部長は「マンモをまず受け、自分の乳腺密度を知ることは非常に大事。次にエコーを受けるか判断の元になる」と話す。日本乳癌(がん)検診学会などの作業部会が、高濃度乳房への検診方法に関する提言をまとめている最中だ。
マンモやエコー以外の検査もある。画像精度の高いMRI(核磁気共鳴画像法)は「主に遺伝性乳がんのリスクが高い人に向いている」(戸崎さん)。乳房専用のPET(陽電子放射断層撮影法)も開発され、がんを区別しやすくなった。「トモシンセシス(3D撮影)」ができるマンモは、乳腺の状態をより明瞭に診断できる。ただこれらの機器がある検査機関は限られ、検診目的の費用は全額自己負担になる。