日銀は6日発表した7月の地域経済報告(さくらリポート)で、全国9地域のうち北海道の景気判断を上方修正し、他の8地域の判断を据え置いた。全地域で「回復」の表現を維持。株高などを背景に個人消費が増え、住宅投資も2014年4月の消費増税後の落ち込みから抜け出しつつあるとの報告が目立つ。ただ消費を支える観光需要や設備投資などの個別項目では温度差がみられた。
さくらリポートは日銀の各支店が四半期ごとに地元企業に聞き取り調査し、景気判断をまとめたもの。北海道の判断引き上げは1年半ぶりで、前回4月まで付けていた「一部に弱めの動きがみられる」を外し、「緩やかに回復している」とした。「海外向けの鉄鋼などの生産が伸びた」(杉本芳浩・札幌支店長)ためだ。
各地の個人消費の分析では「高品質・高付加価値の商品・サービスへの需要が着実に増加している」と指摘した。中国人ら訪日観光客による消費のほか、株高で富裕層らの支出意欲が高まり、勤労者世帯もメリハリをつけて高単価の商品に手を伸ばすようになったことを要因に挙げた。
「戦略的に値上げに踏み切る動きが広がっている」ことにも言及。ただ賃上げなどの恩恵が及びにくい高齢者層などに節約志向が根強く残っているとも付け加えた。
全地域の景気判断に「回復」の表現を使うのは14年1月から7四半期連続。日銀は「大きな地域差はなく、景気回復の足並みがそろっている」と指摘するが、個別項目を詳しく見ると、温度差がある。
設備投資をみると、東海では自動車部品の意欲が中小企業を含めて積極的で、小売店の出店・改装も相次ぐ。16年5月に三重県で開く主要国首脳会議、伊勢志摩サミットなどで「まだ織り込まれていない改修など関連投資も出てくる」(梅森徹・名古屋支店長)との報告があった。一方、四国や九州・沖縄は今年度の設備投資計画がほぼ前年並みにとどまる。
個人消費を支える観光需要も地域差がある。宮野谷篤・大阪支店長は「ホテル稼働率は大阪の90%に対して和歌山は50%」と報告。都市部で先行する消費拡大などの恩恵が地方都市に染み出るには、一定の時間がかかるとの認識を示した。
公共投資も東日本大震災の復興需要がある東北に対し、九州・沖縄は緩やかに減少。「建設業の業況で格差が若干広がっている」(秋山修・福岡支店長)とした。
支店長会議では海外経済の動向を先行きのリスクとして挙げる声が出た。5日の国民投票で財政緊縮策への反対が賛成を上回ったギリシャ情勢を巡り、各地の支店長からは世界的な金融市場の混乱や為替の大幅な変動への懸念が相次いだ。黒田東彦総裁は「内外の関係機関との連携を密にしつつ、金融市場の動向を注視していく」と述べた。