安倍晋三首相が14日に発表した戦後70年談話は海外の主要放送局が中継したほか通信社も速報を流し、その内容と表現を巡り世界の注目を集めている。米国やオーストラリア、フィリピン政府などが談話を評価する声明を発表する一方、欧米メディアの一部は厳しい見方を示す。各国の見方はまだら模様だ。
米国家安全保障会議(NSC)のネッド・プライス報道官は14日、「安倍首相が痛切な反省を表明したことを歓迎する」との声明を出した。首相が歴代内閣の談話を継承する認識を示したことを歓迎するとともに、世界の平和と繁栄に力を尽くすとした安倍首相の意向を評価した。
プライス氏は「70年にわたり日本は平和や民主主義、法の支配を実証してきた」として「世界の国々の模範となるものだ」と述べた。
オーストラリアのアボット首相は同日、安倍晋三首相の戦後70年談話を「歓迎する」との声明を発表した。アボット氏は「第2次大戦での豪州や他国の苦しみを認識したもの」と評価したうえで、同じ地域にある国々が未来志向で「共に前進する」ことの大切さを訴えた。
日豪が戦後70年を経て「特別な関係」を築いたと指摘し、それを可能にしたのは両国の国民や指導者が「過去の影が未来を決定づけることを拒んだ」からだと述べた。豪州は戦争での犠牲や苦難を忘れたことはないが、日本は「何十年にわたり模範的な国際市民として世界の平和や安定に貢献してきた」と強調した。
大戦の激戦地だったフィリピンの外務省は14日夜「戦争の惨禍を繰り返さないとする日本に同意する」とコメントし、談話を評価する立場を示した。
台湾の総統府は同日、安倍晋三首相が発表した戦後70年談話について「馬英九総統は日本政府が今後も歴史の事実を直視し、深い反省と教訓を心に刻むことを期待する」との声明を発表した。馬総統が2008年の就任後に日台友好を推進してきた成果にも触れるなど、日本側への配慮もにじませた。
一方、欧米メディアの見方は厳しい。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は「近隣諸国が要求していたような安倍首相自身の言葉による率直な謝罪は避けた」と解説。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、過去の村山談話で使われていた「心からのおわび」「植民地支配と侵略」という表現をそのまま繰り返すことはなかったと指摘した。
英ロイター通信は安倍首相が「彼自身の新しいおわびは表明しなかった」と報じた。英国放送協会(BBC)も、独自の新たな謝罪は示さなかったと分析。安倍首相は度重なる謝罪の要求にいら立ちを感じている国内の声に配慮する必要があったと解説した。
仏AFP通信は安倍首相が、将来の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないと語ったことを伝えた。
ドイツのDPA通信は中国と韓国が談話の内容に関心を示していたと指摘した上で、安倍首相が「(談話で)繰り返し謝罪した」と伝えた。ただ将来も謝罪を続けるかどうかが曖昧になっていることや、歴史の真相究明が遅れていることを指摘する記事もあった。
シンガポールの政府系テレビ局は安倍首相が談話を読み上げ始めると同時にニュース専門チャンネルで中継した。途中他のニュースを挟みつつ、同時通訳をつけて談話の紹介を続けた。カギとされた「深い反省」「心からのおわび」の言葉が含まれたことを繰り返し報じ、中国と韓国が謝罪を迫っていたことを紹介した。