欧州の銀行は、控えめに言っても、問題を抱えている。大西洋両岸で不正に対して法執行機関が科す罰金には終わりがないように思える。株主は利益水準に満足しておらず、規制当局はバッファーとなる資本金の積み増し圧力をさらにかけて、ますますガバナンスの問題に立ち入るようになっている。一方、世論調査では、行動改善のために相当な経営努力を積んでいるにもかかわらず、銀行家はほとんど誰にも信頼されていないことが明らかになった。
ロンドンのロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)支店=ロイター
この苦境を脱するためには、銀行に強い指導力が必要であることは明白だ。ところが、ガバナンスを専門とするネスター・アドバイザーズが近々発表予定という時価総額で欧州で上位の銀行25行についてのリポートから、会長の専門知識の水準が比較的低いということが明らかになった。実際、専門知識を有する会長の割合は2014年には5割を若干超える程度で、07年の水準を辛うじて上回ったにすぎなかった。
■会長の18%が他社の常勤役員兼ねる
これはほぼ信じがたいことだ。07年以降に3分の2近くの銀行で会長が交代していることを考えるとなおさらだ。金融危機から我々が銀行のガバナンスについて何かを学んだのだとしたら、それは、銀行業や銀行がさらされるリスクについて適切な知識を持つ役員が取締役会に十分そろっていなければならないということだ。デイビッド・ウォーカー卿は、金融危機後の英国銀行業界のコーポレートガバナンスを振り返った中で、銀行の取締役会会長は「金融業界での妥当な経験と取締役会の重要な地位における指導者としての優れた実績の両方を有すべきだ」と語っている。
こうした専門性に欠ける会長が専門事項の改善や、危機後に縮小した非業務執行取締役の独立性について指摘しているのは疑う余地もない。すべての取締役が最も捉えにくいリスクを理解する数字の魔術師である必要もない。
だが、会長職の話となるとこうした議論の意味は薄れる。英国の危機で最も影響を受けた2大組織はロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)とHBOSだ。当時の両行の会長には銀行に関する実質的な専門知識が何もなかった。
また、会長の18%(07年には5%だった)が他社の常勤役員も兼ねているという驚くべき事実も明らかになった。取締役会の仕事量が大幅に増加したことを考えると、これは奇妙な話であり、規制の推進の問題にも関わる。