肝臓移植に伴う輸血でE型肝炎ウイルスに感染し、2人が慢性肝炎を発症していたことが、厚生労働省研究班の全国調査で26日までに分かった。輸血での同ウイルスの感染例はあるが、国内で慢性E型肝炎の発症が明らかになったのは初めて。移植後は拒絶反応を避けるために免疫抑制剤を投与しており、免疫の低下が慢性化に関係しているとみられる。
豚の生レバーなどでもうつる同ウイルスは急性肝炎を起こすことがあるが、肝硬変や肝がんにつながる慢性肝炎にはならないとされてきた。2人は治療で回復しているという。移植に際し、輸血や臓器提供者の同ウイルス検査の必要性を指摘する声が専門家から出ている。
日本赤十字社などによると、献血での同ウイルス検査は、陽性率が比較的高い北海道でだけ実施。研究班の大城幸雄・筑波大講師は「移植手術で輸血が必要な際には、他の地域からの献血の検査も検討すべきでないか」としている。
研究班は、肝臓移植を実施している全国17機関で、通院中の移植後患者1893人を対象に調査したところ、生体肝移植を受けた60代女性と40代男性の計2人が慢性肝炎を発症していた。
移植前後の2人の血液や、臓器提供者の血液などを詳しく調べると、移植手術時の輸血が原因と判明した。現在は抗ウイルス薬の投与で回復しているという。
また腎臓や心臓移植に関しても、本格的な調査に乗り出す。筑波大の大河内信弘教授は「E型肝炎は分かってないことも多く、研究を進めるべきだ」としている。〔共同〕
▼E型肝炎 E型肝炎ウイルスを原因とする感染症。症状は急な発熱や吐き気、だるさなどで、平均的な潜伏期間は6週間。特別な治療法はなく、対症療法が中心となる。急性肝炎を引き起こすほか、妊婦や高齢者は重症化する率が高いとされる。一方で症状が出ないこともあり、通常は慢性肝炎になることはない。主に汚染された食べ物や水から感染する。肉の生食はリスクが高いとされ、今年から豚生レバーなどの提供が禁止される一因となった。過去には輸血で感染した例もある。〔共同〕