トヨタ自動車は9日、ハイブリッド車(HV)「プリウス」を全面刷新して発売した。低燃費を追求したモデルではガソリン1リットル当たりの走行距離を従来型から25%改善。経済性に一段と磨きをかけるとともに、走行の安定性も高めた。国内新車販売の約4割がHVになる中で、生き残りのため燃費以外の強みも打ち出す。
4代目プリウスは愛知県で集中生産する(9日、東京都江東区)
プリウスの全面改良は2009年5月以来、約6年半ぶり。1997年の初代モデル以来4代目となる。ガソリン1リットル当たりの走行距離が40.8キロメートルの「Eモデル」など4モデルを設定し、プリウスとして初の四輪駆動車タイプも投入する。
価格は242万9018円~339万4145円。燃費重視のEモデルが最も安く、3代目の同様のモデルより約20万円引き上げた。
16年1月にはアジアと北米、2月には欧州で発売し、120カ国・地域で販売する。16年の世界販売目標は約35万台。国内では月販目標を1万2千台とし、1万台だった09年の3代目発売当時の目標より高く設定した。事前受注は約6万台と、想定の約2倍に達する。
新型プリウスは部品の共通化などでコストを抑えながら、品質向上に資金を投じるトヨタの新たなクルマ作りの手法「TNGA」を初めて適用。車体の重心を下げたり、レーザーによる接合技術などを採用して剛性を高めたりしたことで、従来のモデルよりも安定して静かに走行できるようにした。
14年の登録車の国内販売上位10車種のうちHVのある車種が8に達し、新車の4割がHVとなった。加藤光久副社長は「燃費だけで商品が売れた時代はもう終わっている」と語る。TNGAを起爆剤に燃費以外の製品力を高めたプリウスは、新たなトヨタの戦略の成否を占う試金石となる。