化学及血清療法研究所(熊本市、化血研)が感染症法で定められた届け出を怠り、強い毒性を持つボツリヌス毒素を熊本県内の事業所間で運搬していた問題で、厚生労働省は21日、化血研に立ち入り検査に入った。
厚労省などによると、化血研は食中毒の治療薬など医薬品の原料に使われるボツリヌス毒素について、県内の施設と施設の間を運ぶ際、感染症法で定められた届け出をしていなかったという。
ボツリヌス毒素は生物テロなどの犯罪に使われる恐れがあるとして、0.1ミリグラムを超えて運ぶ際には都道府県の公安委員会に届け出る必要がある。化血研の内部調査で2007年以降、届け出を怠っていたケースが計4件確認されたという。運搬中の事故などトラブルはなかったとしている。
厚労省は立ち入り検査でボツリヌス毒素の管理状況などを調べる。
ボツリヌス毒素は食中毒の原因となる。1984年に熊本県で製造された真空パックのからしれんこんによる食中毒で、11人が死亡した。
化血研を巡っては、国の承認と異なる方法で約40年前から血液製剤などを製造し、国の定期検査に対して組織的な隠蔽工作をしていたことが発覚している。