高橋まつりさん(左)と母幸美さん(2013年5月、中国・万里の長城で撮影。幸美さん提供)
広告大手、電通の新入社員で1年前に過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母、幸美(ゆきみ)さん(53)が、まつりさんの命日の25日にあわせ、手記を公表した。愛する娘の死をきっかけに長時間労働の是正に向けた社会的関心が高まっていることに触れ、日本人の働き方を変えていくために、働く人一人ひとりの意識を変えてほしいと訴えている。
「まつりの死で世の中が大きく動いた」 母親の手記全文
まつりさんは東大文学部を卒業後、昨年4月に電通に入社。インターネット広告を担当する部署に配属された。試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降に業務が大幅に増え、労働基準監督署が認定した1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は約105時間にのぼった。深夜勤務や休日出勤が続き、上司から「髪の毛がボサボサだ」「女子力がない」「君の残業時間は会社にとって無駄」などと言われてもいた。このころ、うつ病を発症したとみられる。睡眠時間が1日2時間程度、1週間で10時間ほどのこともあった。
昨年のクリスマスの朝、都内の女子寮で身を投げ、自ら命を絶った。長時間の過重労働が原因で過労自殺に至ったとして、今年9月末に労災が認められた。遺族側代理人の川人博弁護士は「長時間労働、深夜労働、上司のパワハラが全て重なった」と指摘する。
労災認定を受け、電通は10月から、午後10時に本社ビルを一斉消灯し、深夜残業を原則禁止した。長時間労働を助長しかねない企業風土を象徴する心得だとして遺族側が問題視している「鬼十則」について、来年から社員手帳への掲載をとりやめることも決めた。
11月には、違法な長時間労働がはびこっている疑いが強まったとして、厚生労働省の強制捜査を受けた。法人としての電通と関係者の書類送検に向けた捜査がいまも続く。(千葉卓朗)