国際会計基準(IFRS)のルール作りを手掛ける国際会計基準審議会(IASB、本部ロンドン)のハンス・フーガーホースト議長が来日し、21日の報道機関向け説明会で「IFRS導入する日本や中国、インドの企業が増えている」と話し、IFRSのアジア普及に一定の評価を示した。
日本の企業にとってIFRSの適用が任意でありながらも、「100社近い大企業がIFRSを導入し、200社近い企業が導入を検討している」と指摘。IFRSを導入もしくは導入を検討している企業の時価総額の合計が全上場企業の時価総額の4割に当たることなどを挙げて、今後の導入の広がりに期待感を示した。中国やインドでも現地の会計基準がIFRSに類似するようになっていることや、グローバルに展開する現地企業がIFRSを導入しているとし、IFRSが一段と会計の世界基準に近づいていると強調した。フーガーホースト議長によると企業がIFRSを導入することのメリットについて「世界に展開する子会社との会計上の統合ができるほか、世界中の投資家が同じ尺度で企業の状態を比較できる」と話した。
一方で、IFRSが強制適用される欧州連合(EU)などと違い日本が任意適用となっている点については「日本の規制当局の判断を尊重するし、海外展開をしない企業にとっては日本の独自の会計基準でもいいのではないか」と適用の義務化は求めない方針を示した。
IFRSではリースに関する会計処理の方法が企業の経営実態を表していないことや、企業の保険契約に対する公正な価値評価の基準が明確になっていないなどの問題も指摘されている。IASBはリースに関する会計処理の最新基準を来年1月前半にも公表し2019年度に適用する考え。保険関連の評価基準も来年中に公表し、早くても20年度には適用するとしている。
フーガーホースト議長は、IFRS導入を検討している東芝(6502)の一連の不適切会計問題については「詳しくは内容を知らないし、個別の企業のことなのでコメントできない」とした。ただ「不正の起きない会計基準を作ろうとしているが、企業側の会計操作の意志があればそれを100%回避できない」と、会計基準による不正防止の限界も指摘した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕