【ジュネーブ=原克彦】国連の世界観光機関が18日発表した2015年の海外旅行者数は世界で11億8400万人と前年に比べ4.4%増え、過去最高を更新した。中国などの中間層による国外旅行が増えているほか、原油安によるガソリン代の低下などで移動にかかる費用が安くなったことなども追い風になったようだ。ただ、一部の地域はテロの影響で減速しており、今後の懸念材料になりそうだ。
海外旅行者数は過去20年にわたりほぼ一貫して伸び続け、15年は1995年の2.25倍に達した。けん引役は引き続き中国からの旅行者で、同機関は「日本やタイなどアジアの観光地に恩恵をもたらしている」と指摘。逆にロシアやブラジルからの旅行者は通貨安や景気悪化で落ち込んでいるという。
地域別にみた旅行者の受け入れ人数の伸び率は欧州が前年比5.0%増と同2.6ポイント上昇した。欧州中央銀行(ECB)の金融緩和でユーロ安が進んだ影響が大きい。一方、北米も同4.4%増と堅調だったものの、伸び率は5.3ポイント低下した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げを織り込んでドルが主要通貨に対して上昇したためだ。同機関は世界全体での旅行需要は底堅いとみて、16年の海外旅行者数を4%増と予想する。
世界全体では好調な観光市場だが、一部ではテロや紛争が影を落としつつある。北アフリカは日本人の犠牲者も出たチュニジアでのテロなどで不安が広がり、15年の旅行者受け入れ数が同7.8%も落ち込んだ。西欧は11月半ばにパリ同時テロが起きた余波で、12月の伸び率が前年同月比0.4%と9月の3.3%より大幅に減速している。
リファイ事務局長は観光が多くの国の経済成長に貢献していると指摘し、ビザ(査証)発給要件の緩和など「旅行円滑化などの政策を促すのが肝要だ」と訴えた。