北海道旅客鉄道(JR北海道)は28日、2016年度の事業計画を発表した。このうち収支計画では近年進めている安全投資の拡大や新幹線事業の経費増加、経営安定基金の運用益縮小などで最終損益が44億円の赤字(15年度見通しは28億円の黒字)と予想する。11年度以来5期ぶりに赤字となる見通し。迅速な事業の選択と集中が不可避だ。
収支計画では、新幹線開業や外国人客の利用増などで売上高は15年度見通しと比べて12%増の920億円を予想。安全投資や修繕費の増加で営業費用は6%増の1385億円を見込む。営業外利益は30%減の290億円を予想。近年、経営安定基金の評価益の実現化を年100億円規模で実施していたが、16年度は国からの追加支援を得るため実施しない。
営業外利益の縮小で経常損益は175億円の赤字(15年度見通しは69億円の赤字)と過去最大の赤字を予想する。
事業計画の最重点事項として安全の再生、事業範囲の見直し、北海道新幹線の開業効果最大化、コンプライアンスの徹底の4本柱を掲げた。島田修社長は札幌市内の本社で記者会見し「事業範囲の見直しが大きなポイントになる」と説明した。
事業範囲の見直しについては、都市間輸送体系の検討やグループ会社再編などを盛り込んだ。都市間輸送体系の見直しについて、島田社長は具体的な計画はないとしたうえで「特急気動車の老朽化度合いを慎重にみないといけない。経年30年を越える車両は、あと何年使えるかを1両1両しっかり把握し、輸送体系を組み立てる」と話した。
同社は15年6月、国から16年度からの3カ年で1200億円の追加支援を得た。安全対策を進める上で当面は資金面での裏付けを得た格好だが、将来は返済の必要がある無利子貸し付けも含まれる。島田社長は長期的な収支改善の施策について「私どもだけでは財源が確保できない路線は、鉄道ネットワークの維持について各地域、国と相談しながら、財源を誰がどのように負担するかという協議の課題が残されている」と述べた。