熊本県天草市の県営路木ダム建設に公金を支出したのは違法だとして、住民らが蒲島郁夫知事に約20億円の返還などを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(大工強裁判長)は25日、公金支出は違法だと認めた一審・熊本地裁判決の県が敗訴した部分を取り消し、住民側の請求を退ける判決を言い渡した。ダムの整備計画に瑕疵(かし)は認められないと判断した。
2014年2月の熊本地裁判決は、県側の「1982年の豪雨で浸水被害があり、ダムが必要だった」とする主張を、この洪水で浸水被害はなかったとして退けるなど、ダム建設は治水面では違法と認定し、公金支出の差し止めを命じた。一方、蒲島知事が整備計画の違法性を認識するのは困難だったとして、事業費の返還請求は退けた。
高裁判決は、客観的資料がなくても、82年の洪水による浸水被害が存在しないとは言えないとして、一審判決を一部取り消した。
原告団代表の植村振作さんは「強い憤りを感じる。税金の無駄遣いをなくすために、引き続き行政の責任をただすつもりだ」とのコメントを発表し、上告する方向で検討する意向を明らかにした。蒲島知事は「私どもの主張が認められたと受け止めている」とコメントを出した。(張守男、渡辺松雄)